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物価2%目標、好循環伴う実現目指せ

日銀が、消費者物価の上昇率が安定的に2%に達する時期を、従来の予想から1年先送りして「2019年度ごろ」とすることを決めた。収益が好調な企業が賃金を引き上げ、それが個人消費の拡大につながり、物価も上がるという好循環の実現に政府・日銀は粘り強く取り組む必要がある。

黒田東彦日銀総裁が2013年4月にいわゆる異次元緩和を始めてから物価安定目標の達成時期を先送りするのはこれで6回目になる。

日銀は20日の金融政策決定会合にあわせてまとめた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、物価見通しを引き下げる一方、経済成長率の見通しは上方修正した。景気の先行きについては「景気は緩やかな拡大を続けるとみられる」とした。

日銀は、内外経済が堅調なこともあり、「物価安定目標の達成に向けたモメンタムは維持されている」として、追加の金融緩和は見送った。

経済が成長し人手不足にもかかわらず、賃金・物価がなかなか上がらない。

携帯電話機や通信料引き下げという一時的な物価の押し下げ要因に加えて、日銀が指摘しているのは、物価が上がらないことを前提にした企業や家計の考え方や慣行だ。

企業は人手不足に対応してパート従業員の賃金を上げているが、正社員の賃上げは抑制気味で、その代わりに省力化投資などにお金を振り向けている。賃金・価格の決定権を持つ企業が、依然として引き上げに慎重姿勢だという。

賃金の上昇に広がりがないと、個人消費も盛り上がらないし、人々の予想物価上昇率もなかなか上がってこない。

物価安定目標の達成には、日銀の金融政策だけではなく、企業の意識改革や、政府による構造改革を通じた成長戦略の推進も欠かせない。

企業が日本経済の将来に自信を持ち、正社員も含めた賃上げに動く環境を整えることが必要だ。企業は生産性向上を実現すれば、その分を賃上げに振り向けることができる。

規制改革を通じた国内投資機会の創出や、生産性向上に役立つ雇用市場の改革など政府の後押しも不可欠だ。経済が拡大基調にある今こそ、既得権益者の抵抗が強い構造改革を進める好機でもある。

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