LNG取引の自由化を促そう
液化天然ガス(LNG)取引で売り手が買い手に転売を制限する取引慣行は、独占禁止法に違反する恐れがある。そんな報告書を公正取引委員会がまとめた。
電力やガス会社などLNGの買い手が手持ちのLNGを自由に売買できれば、調達を最適化しコストを下げることができる。世界最大のLNG輸入国である日本にとってメリットは特に大きい。
これを阻む硬直的な取引慣行を公取委が問題視し、実態調査に踏み切ったことは重要だ。報告に強制力はないが、売り手との交渉にいかし、自由な取引市場を育てる一歩にしていきたい。
LNGは天然ガスを産出地に近い場所で冷却・液化し遠い消費地まで専用の輸送船で運ぶ。一連の設備には巨額の費用がかかる。
売り手は投資を確実に回収するため、買い手と20~30年に及ぶ長期契約を結び、荷揚げ地を契約に明記した港に限定する「仕向け地条項」と呼ぶ条件を盛り込むケースが、多かった。
LNGの導入国は近年、東南アジアや中南米、欧州など世界各地に広がる。一方、米国で割安なシェールガスを原料としたLNGの生産が本格化するなど、生産と消費の両面で多様化が進む。
取引の形も、5年程度の短期契約やスポットでの取引が増えている。買い手が手持ちの余剰分を売り不足分を他社から買えれば、余分な在庫を持たずに済む。
政府は2020年代前半までに日本をLNG取引の拠点に育てる政策を掲げている。市場の整備には、売り手と買い手が自由に売買できることが大前提になる。
欧州委員会は00年代からロシアやアルジェリアなどガス供給国の販売地域制限を問題視し調査を通じて是正を求めた。結果、買い手に不利な条件の撤廃が進んだ。
日本もアジアの消費国と連携して、産ガス国や売り手企業と交渉すべきだ。地域全体で自由な取引環境をつくることが、LNG貿易の拡大を促し、調達の安全網を整えることにつながるはずだ。
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