「デマニュースがビジネス」 世界中で組織化の実態
藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

2017/7/13 6:30
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昨年、米大統領選をめぐって勃発した「デマニュース」騒動は、その後も、大統領の近辺ではいっこうに沈静化の兆しが見えない。最近も、大統領とは「犬猿の仲」となったニュース専門放送局のCNNが、裏づけが不確かなまま、大統領側近とロシア側との接触をニュースとして取り扱った。調査報道担当のベテラン記者ら3人を退職させ、公式に謝罪する事態が起きた。

このように、米国ではデマニュース問題は、大統領と、それに批判的な報道機関らとの間で泥仕合の様相も見せているが、デマニュースはこのような米国内の局地戦にとどまらない。フランス大統領選の直前には、マクロン氏に関するフェイクニュースが出回った。

今やデマニュースは世界の政局やビジネスを動かしかねない火種として、影響力を急速に広げている。周到なデマ情報の作成と、高度な技術や交流サイト(SNS)などを駆使して話題を拡散し、政敵を失墜させる工作が手法として定着しているのだ。

いいかえれば、デマニュースの背後には、これをビジネスとする人々がいて、そのための組織や技術が完成しつつある。しかも世界各国でだ。

これを詳細にリポートする文書が最近になって公開され、世界に衝撃を与えた。サイバーセキュリティー企業のトレンドマイクロ社が公刊した「フェイクニュース・マシン」である。

リポートには、アメリカ、ロシア、中国、中東などでのデマニュースビジネスの実態が紹介されている。それによれば米国では、40万ドル(4500万円)もあれば、選挙結果に影響を与えられるという。

ジャーナリストの名誉を傷つけるなら6万ドル弱だ。ロシアでは、選挙工作で当選実績を誇る宣伝まで流布されている。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身。

いずれの国でも、デマニュースの効果をあげるため、品質の高いデマ記事や動画の制作から始まり、SNSでフォロワーの多い利用者に「いいね」や「シェア」をさせる、さらに、街頭での抗議行動なども組織し、敏感な人々に火種を提供するといった方法がメニュー化されている。

トレンドマイクロのリポートにはそのようなメニューのコピーが収録されている。デマニュースは、いまや高度に洗練されたビジネスへと成長していることがわかる。

また、「インフォメーション」の報道によれば、中国では、政治活動は厳しく監視されているため、デマニュースビジネスは、「影の企業PR」に広く用いられるという。つまり、自社宣伝や他社の悪評判づくりが、メニュー化されており、多くのセミプロ級のブロガーや著名なSNS利用者が有料で動員される仕組みが半ば公然と行われているのだ。

デマニュースを巡っては、政府機関が行うような謀略の手法が、いまでは安価に「民間」が利用できるようなビジネスになろうとしている。そうであるならば、対策もまた高度なものにならなければならない段階にきているといえる。

[日経MJ2017年7月10日付]

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