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一層強まった香港「一国二制度」への不安

中国返還20周年を迎えた香港で演説した習近平国家主席は「中央の権力へのいかなる挑戦も絶対に許さない」と香港独立論をけん制した。「一国意識」も強調している。香港に高度の自治を与える「一国二制度」の形骸化を懸念する香港住民の不安をあおりかねない内容である。

習主席は「国家の歴史と民族文化の宣伝教育を強める必要がある」と香港青少年への愛国主義教育の強化も訴えた。これは国家分裂を図る政治活動を禁止する「国家安全条例」制定に向けた布石でもある。

1日夕、民主派が主催した6万人規模とされるデモ行進でも愛国教育反対のスローガンが目立った。過去に大規模な反対運動を引き起こした国家安全条例と愛国主義教育の問題は再び混乱を招きかねず、慎重な対応を求めたい。

中国は香港返還時に有権者「1人1票」の普通選挙を将来、導入すると約束した。だが3年前に示したのは親中派しか出馬できない制度だった。学生らの反発は激しく、民主化を求めて道路を占拠した「雨傘運動」につながった。

この時、学生と対峙した政府代表が香港新トップ(行政長官)に就いた林鄭月娥氏だ。3月の行政長官選挙に先立つ世論調査では民主派も推した対立候補の支持率が高かった。だが大勝したのは中国政府が支持した林鄭氏だった。選挙改革の挫折により従来の間接選挙で選ばれた結果でもあった。

香港では郷土愛が強い「本土派」と呼ばれる若者らが香港の主権を訴える勢力として台頭している。香港新トップの喫緊の課題は香港社会に生じた亀裂の修復だろう。「雨傘運動」の後、香港では中国に批判的な書籍を扱う書店の関係者が次々連れ去られた。「一国二制度」の根幹を揺るがす事件を二度と起こしてはならない。

先に頓挫した香港トップの普通選挙の実施も再度、中央政府に提起すべきだ。それは香港住民が納得する制度でなければ意味がない。簡単な仕事ではないが、中央政府にとって耳の痛い話でも、言うべきことを言う必要がある。

中央政府には長期的視点から香港の繁栄を確保する義務がある。重要なのは香港の自由な雰囲気を象徴する「一国二制度」を真の意味で尊重する姿勢だ。それでこそ世界から人材、情報、資本が香港に集まり、最終的に中国本土の安定的な経済成長に寄与する。

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