2019年2月16日(土)

費用対効果を検証し納得できる薬価を

2017/6/26 2:30
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厚生労働省は健康保険料などで費用を賄っている薬の効果が価格に見合うか広く検証し、2018年度以降、費用対効果が劣る薬の価格を引き下げる。増え続ける薬剤費が医療財政を圧迫するのを避けるためだ。透明で国民が納得できる薬価制度につなげてほしい。

準備のため厚労省は今夏、薬価に関する国民調査をする。たとえばがんの薬で「命を1年間延ばすのに、この程度の額なら公的医療保険で負担してもよい」という水準を聞く。

結果を製薬会社のデータなどと合わせ、薬の費用対効果を測る「ものさし」をつくる。調査で国民の「相場観」をつかめれば、ものさしに説得力をもたせやすい。

国の医療費は40兆円を超え、薬剤費はその約2割を占める。高額な抗がん剤や再生医療が普及すれば増加ペースは上がるとみられ、いずれ公的医療保険で賄いきれなくなるとの懸念は強い。今回の調査は危機感を国民全体で共有するきっかけにもなろう。

ただ、1年間健康に生きるためにいくらかけるかは、一人ひとりの人生観にもつながるデリケートな問題だ。単純に金額では割りきれない面もある。

薬の費用対効果の評価が定着している英国では、この金額は2万~3万ポンド(約280万~420万円)とされる。しかし英国の評価機関が高額な新しいがんの免疫薬の使用を推奨しない方針を示すと抗議が起き、見直しを迫られた。

過度の薬価引き下げは、製薬会社の開発意欲をそぎかねないという問題もある。新薬開発は10年近い歳月と1000億円前後の費用がかかる場合もある。優れた研究成果を国内で製品化できず、海外企業に先を越された例は多い。

高額の薬でも遺伝子解析などによって投与に適した患者を絞り込めれば、薬剤費が無制限に膨らむのを避けられる。逆に適用範囲が拡大し、価格が低くても量で稼げる薬も出てくるだろう。

費用対効果は、こうした技術の変化などを受け柔軟に評価する工夫が必要だ。信頼性があり客観的な分析ができる、英国のような独立した評価機関もいる。

費用対効果が思わしくない極めて高価な薬を、公的医療保険の対象からはずすのも検討課題だ。富める者だけが良質な薬を買えるという不公平感を生まぬよう、医療全体の質を底上げすることが前提なのは言うまでもない。

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