2018年12月11日(火)

春秋

2017/6/4 2:30
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東京・新宿駅西口の「思い出横丁」は、今も戦後の闇市の風情を残す。副都心の高層ビル街とのギャップが面白いのか。SF映画の名作「ブレードランナー」が描く怪しげな路地を思わせるからか。外国人観光客にも人気だ。カメラを片手に店をのぞく人波が絶えない。

▼終戦直後から続く裸電球のぶら下がったもつ焼き店で、40年以上通う常連さんと孫のような若い外国人が笑顔で触れ合う場面を見かけた。観光客が日本製インスタントカメラで隣り合わせた客を撮影。プリント写真を手渡していた。デジタル万能時代にかくもアナログな「いいね!」の輪が広がるのか、とうれしくなった。

▼広告専門誌「宣伝会議」6月号で、このインスタントカメラの企画担当者がヒットの要因を語っていた。カメラ付き携帯電話の普及により販売は一時、激減した。が、昨年度は世界で660万台を売り過去最高に。プリント写真という実在するモノを他者に贈与する。その体験が新鮮で、幅広い世代の共感を呼んだという。

▼哲学者の東浩紀さんの新著「観光客の哲学」はグローバリズムとナショナリズムに分断された2つの世界を架橋するのが「出会うはずのないひとに出会い、考えるはずのないことを考える」観光客だと説く。交流サイトの枠を越え、少しピンぼけの写真を媒介に世界と交わるあの外国人青年は、私たちの希望なのだろうか。

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