ガレージでディナー、米発「ソーシャルダイニング」 - 日本経済新聞
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ガレージでディナー、米発「ソーシャルダイニング」

(三浦茜)

映画や演劇のチケットを予約するように、前売りチケットを購入するレストランが米国にある。「Feastly(フィーストリー)」というこのサービス、前売りチケット型であるだけでなく、ソーシャルダイニング、マーケットプレイス、スペースシェアなど様々な要素が含まれている。先日体験してみた。

「食事こそソーシャルネットワークの原点」。こんなコンセプトで見知らぬ人と食卓を囲むサービスだ。当初は食事版エアビーアンドビーとして、地元の人やシェフが自宅で食事を提供するマーケットプレイスからスタートした。現在はプロのシェフにフォーカスし、場所も自宅ではなくフィーストリーが用意したスペースが中心だ。

サイトに並ぶメニューから食事を選ぶ。開催日、予算、食事の種類(アジアン、フレンチ、ハワイアンなど)から選ぶことができる。著者は今回ICHIDOという日本食フュージョンのメニューを選んだ。3000件以上の高評価レビューが付いている人気シェフだ。食事は5品にデザートがついて85ドル、午後7時スタートで10時終了。場所は申し込み前は大まかなエリアが表示され、申し込み完了後に具体的な住所が送られてくる。

予約当日にたどり着いた場所は、ガレージを改装したスペース。中央に長テーブルが配置され席数は30人。一番奥にはキッチンがある。シェフが調理する様子をのぞきながら、食事を楽しめるようになっていた。インテリアや照明も凝っていてなかなか雰囲気もよい。

7時を少し回った頃に、食事は一斉にスタートした。30人全員同じメニューだ。1品1品サーブされた後にシェフから食材の産地や調味料の説明がある。日本食のフュージョンだったので「酒粕」といった普段米国では聞かない言葉も飛び出した。

席は知らない人と隣どうしである。大半は友人やパートナーと参加しているようだったが、隣り合わせの見知らぬ人とも会話を交わすことになる。同じ空間で同じ食事を食べるだけで十分共通の話題となる。食事の席なので、そこから派生してサンフランシスコでおいしいレストランの話などで盛り上がった。

少々長めのディナーだったが、おいしい料理をゆっくり楽しめた。また次回違うシェフの会に参加してみようと思った。フィーストリーではディナーだけでなく、ランチや料理教室なども開催されている。日本でも最近は相席居酒屋など、知らない人との食事に抵抗がないようなので、はやるのではないかと感じた。

シェフの目線でも便利なサービスだと感じた。米国では30%のレストランが開業初年度で閉店し、さらに30%が2年目で閉店するといわれる。非常に厳しい環境だ。

フィーストリーを利用すればシェフは料理に専念でき、場所の用意や決済、そして集客までフィーストリーに任せられる。まずフィーストリーでよい料理を出し、リピーターが増えるようであれば自分の店を持つという可能性もある。

フィーストリー側の運営の仕組みも良くできていると感じた。事前にチケットを販売しているので、当日お金のやり取りはなく、会場にレジや金庫といった設備を用意する必要はない。

通りすがりの客を期待していないので、レストランの立地は必ずしも良い場所でなくてもよい。また全員が同じメニュー、同じペースでの食事提供のため、食事をサーブする人の数が少なくて済む。30人に対してサーバーは2人だった。

利用者にはソーシャルダイニングを、シェフ側にはシェアスペース兼レストラン運営代行を提供するフィーストリー。インターネットと現実世界とミックスして面白いサービスを提供していると感じた。

(スクラムベンチャーズ マーケティングVP)

[日経MJ2017年6月2日付]

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