2019年7月19日(金)

春秋

2017/5/31 2:30
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民放の女性アナウンサーが以前ラジオ番組で、里帰り出産をした際のこんな話を紹介していた。自分がアシスタントとしていっしょに仕事をしていた放送作家の永六輔さんから、東北の実家にはがきが届いたという。裏にはひと言こうあった。「こんにちは 赤ちゃん」

▼永さんのちゃめっ気と、満面の笑みで喜ぶ受け手の様子が伝わってくるようだ。電子メールや交流サイトでのやり取りが普及しても、手書きのぬくもりは変わらない。ラジオへの投稿はいまでもはがきが少なくないし、「相手の気持ちをグッとつかむため、お礼やお願いは手書きで」と勧めるビジネス指南書の類いも多い。

▼そのはがきが明日、52円から62円へと23年ぶりに値上げされる。郵便物は減り続け、人件費が重くのしかかる台所事情はよく分かる。だが郵政民営化のときに期待されたのは、「もうからないものは値上げ」という道ではなかったはずだ。この先、値上げと利用者減少の悪循環に陥らないよう、さらに知恵を絞ってほしい。

▼旅先にもはがきを持ち歩き、一日何十通も書き続けた永さんのような達人にはなれないが、相手の顔を思い浮かべながらはがきを選ぶひとときを大切にしたい。思いのこもった便りを全国津々浦々に、確実に届ける。改めて考えればなんと意義深い仕事であろうか。事業の重荷であるかのように扱われてしまっては悲しい。

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