1000億ドルファンドの光と影

2017/5/30 2:30
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ソフトバンクグループが軸となる総額1千億ドル(約11兆円)の投資ファンドが発足した。サウジアラビアの政府系ファンドなども出資し、人工知能(AI)をはじめとする世界の次世代IT(情報技術)企業に投資するという。

日本企業と中東マネーという異例の組み合わせがITの変革を主導できるか、注目したい。

新ファンドの最大の特長は1千億ドルという規模だ。新興企業に投資するベンチャーキャピタル(VC)は米国や中国をはじめ世界中にあるが、VCのつくる個々のファンドは大きなものでも100億ドル規模というのが通例で、新ファンドの資金力は桁違いだ。

投資額がかさむので、これまでは個別のVCではリスクの取り切れなかった半導体など製造業系の企業やプロジェクトにも投資対象が広がる可能性がある。

出資者の顔ぶれも多彩だ。ITの目利きとして米ヤフーなどへの投資を成功させてきた孫正義社長率いるソフトバンクに、サウジやアラブ首長国連邦系のファンドが合流した。

石油の富を浪費することなく、先端技術に還流する。こうした資金の流れが太くなれば、起業やイノベーションが盛んになり、世界経済の活性化に寄与するだろう。

一方で懸念も大きい。一つはファンド内部の意思決定のあり方だ。投資先選定の主導権はソフトバンクにあるとされるが、他方で資本の過半を出資するのは中東勢だ。両者の間で意見の不一致が生じたときはどうなるのか。

サウジの国策に沿った投資が優先されることになれば、ファンドとしての自由度が狭まり、収益に悪影響を及ぼす恐れがある。

運用実態の丁寧な開示も欠かせない。ソフトバンクは新ファンドを連結対象に加える方針で、ファンドの成績が同社の業績に直結するからだ。仮にファンドで大きな損が出た場合、それを埋めるために同社の携帯電話の利用者にしわ寄せが生じるような事態があってはならないのは言うまでもない。

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