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環境問題「グリーンAI」が挑む 廃棄物を選別

日経エコロジー編集部 半沢智

環境分野でも人工知能(AI)の活用が進んでいる。産業廃棄物処理業者のシタラ興産(埼玉県深谷市)では、これまで人間が手作業で実施していた廃棄物の選別作業を、AIを使ったロボットに置き換えた。ベルトコンベヤーに流れてくる様々な材質が交ざり合った廃棄物を選別できる。こうした「グリーンAI」はどこまで広がるか。

シタラ興産が導入した廃棄物を選別するAIロボット(埼玉県深谷市)

シタラ興産では、選別ラインの途中にカメラと赤外線センサーを設置。これらで廃棄物の形状を認識する。

現時点で20種類の廃棄物を学習させており、1時間に約3000個を選別する。人手では、1日当たり約300~400トンの処理が限界だったが、AIロボットの導入によって処理量は5倍の2000トンになった。

なかなか進まない「食品ロス」の削減にもAIが威力を発揮し始めている。食品ロスは、本来食べられるはずなのに廃棄されてしまう食品のこと。世界では毎年約13億トンの食品ロスが発生しており、社会問題になっている。

日本気象協会(東京・豊島)は今春に、企業が生産・販売する商品の需要を予測する専門部署を立ち上げた。AIを活用し、気象データと過去の販売データから最適な需要量をはじき出すサービスだ。同社のサービスを活用し、食品ロスの削減に取り組んでいるのが、豆腐メーカーの相模屋食料(前橋市)である。

豆腐は賞味期限が短く、在庫の確保が難しい。品切れを恐れて過大に生産する傾向があり、食品ロスが発生しやすかった。AIによる需要予測サービスを活用して過剰生産を抑え、廃棄量を約30%削減した。

AIを住宅やビルの省エネに活用する取り組みも進んでいる。

住宅リフォーム事業などを手掛けるエコライフエンジニアリング(東京・新宿)は、6月からAIで家を丸ごと制御する「AIスマートホームシステム」を販売する。

部屋に設置した各種のセンサーから居住者の行動データを集めてAIが学習。居住者の行動を予測して照明や空調などを制御することで、消費電力の最適化を図る。

現在、新宿区のマンションの1室でモデルルームを開設しており、希望者は住んでみることもできる。同社の蔵並弘人社長は、「照明、空調、カーテン、換気扇などのスイッチ操作が激減する」と話す。一般的には、休日に1日150回程度のスイッチ操作をするが、AIによる学習が進むと15回程度に減るという。

このほか清水建設は、AIを活用したビルの省エネに取り組んでいる。ビルの省エネを丸ごとAIに任せる試みという。

AIによって環境に関わる仕事はどのように変わるのか。

AIと比べて生産性が低くコストが高い仕事は、AIに取って代わられるだろう。シタラ興産が導入した廃棄物の選別ロボットが典型例だ。人間の手よりAIロボットの方が圧倒的に生産性が高い。廃棄物の選別は、粉じんのなか長時間立ったまま作業を繰り返す過酷な仕事でもある。こうした人間にとって過酷な仕事はAIに代わりそうだ。

大量の情報を分析して精度の良い結論を導くような業務でも、人間には限界がある。日本気象協会のAIを活用した商品需要予測サービスのように、人間の勘や経験に頼っていた仕事は、今後、AIが活躍の幅を広げていくだろう。

地道な努力が欠かせない省エネ活動なども、AIの役割になるかもしれない。「こまめな消灯」「空調の適正温度」といった取り組みの推進は、省エネ活動の中心だ。ただ、人間に全て任せるには限界がある。AI技術が進展すれば、こうした省エネ活動も任せられるようになる。

環境、資源、エネルギーといった社会問題を解決する技術として、「グリーンAI」が欠かせないツールになりそうだ。

[日経産業新聞2017年5月25日付]

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