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メキシコの起業家が語るフィンテック4つの役割

ジョアナ・ドレイク(コア・ベンチャーズ・グループ ジェネラルパートナー)

シリコンバレーの投資家の多くは、ネットワークの中で最も大胆な起業家と密接な関係を保つことにより、テクノロジーのトレンドを予測する。今回はそのような起業家との対話を紹介したい。登場するのは、メキシコを代表するフィンテック企業のクエスキの創業者兼最高経営責任者(CEO)のアダル・フローレス氏だ。

――以前は動画配信のスタートアップ(ベンチャー企業)を経営していました。なぜクエスキを設立し、メキシコでは初めてとなる消費者向け融資をオンラインで行うプラットフォームを創設したのですか。

「オンラインでコンテンツを購入するにはクレジットカードが必要です。しかし、メキシコ人の85%がクレジットカードを持っていないという事実に突き当たりました。1994年のメキシコの金融危機(テキーラ危機)により、中央銀行は金融機関に財務の健全性に関する規制を厳格にしました。そのため、一般の人が銀行から融資を受けることが困難になりました。それから20年以上もたっているのに、メキシコ人の60%が銀行に口座を持つことができていません」

――サービスはどのようなものですか。

「24時間365日利用可能なオンライン・マイクロ・ローンを提供しています。最新のデータと人工知能(AI)を利用し、数分間で信用リスクを査定し、顧客に貸し付けています」

――どのようにAIを使っているのですか。

「見込み客が当社のウェブサイトにアクセスした瞬間、信用査定の間、貸付金の回収過程――。私たちと接するあらゆる場面において、顧客がどのような行動をとるのかを調べ、それらと返済実績との関係を機械学習させています」

「ローンを申し込む時点での動作や入力のパターンを分析することにより、莫大な量のシグナルを拾い上げます。非常に速く入力する見込み客がいたとしたら、詐欺である可能性が高いと判断します。ゆっくり入力するとしたら、その顧客の信用能力は低くなる傾向があります。速すぎず、遅すぎず、ちょうどよいスピードで入力する顧客は貸し倒れの可能性が低い優良顧客となる可能性が高いのです」

――フィンテック分野における主要なトレンドはどのようなものと考えていますか。

「次の4つだと考えています。(1)資産管理や保険リスク管理といった新たな分野へのAIの応用(2)銀行がこれまで融資対象にしてこなかったような人や企業に対する信用査定と、その情報の提供(レンディング・アズ・サービス)(3)信頼性の確認(トラッキング)を目的としたブロックチェーン利用(4)規制順守を確保するための技術(レグテック)――」

――フィンテックに関する誤解で最も顕著なものはどのようなものでしょうか。

「銀行への脅威と見られがちですが、実際には銀行との協業で互いの顧客の価値を高めようとしています。銀行は新しいテクノロジーを活用して魅力的な金融商品を開発しています」

――伝統的な銀行業界で働く日本人にどのようなアドバイスをされますか?

「自分たちが属するエコシステム(経済の生態系)の中で頭角を現すスタートアップとの関係を築くことですね。当社はメキシコの主要銀行の多くとパートナーシップの関係を築いています。我々は顧客と市場に関する知見を提供する代わりに、銀行のブランド力と顧客基盤へのアクセスを享受しています」

[日経産業新聞2017年5月16日付]

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