東京電力福島第1原子力発電所で汚染水を減らす決定打になるとも期待される凍土壁が、稼働を始めて1年を過ぎた。7メートルほどの区間を残して凍結を終え、原子炉建屋に流れ込む水の量は減っているが、なお油断はできない。
凍土壁は、原子炉建屋を取り囲むように全長約1.5キロメートルにわたって土壌を凍らせ、作る。汚染水のもとになる地下水の流入を遮断する狙いだ。
建屋内外の水位差が変わると汚染水が外に漏れ出す可能性もあるため、水位を確認しながら段階的に凍らせている。完全な遮蔽までに時間がかかっている。
建屋への流入水量は過去3年で4分の1近くに減ったが、地下水くみ上げの効果が大きいとみられ、凍土壁がどれだけ寄与したかは明確でない。建設に345億円の国費を投じただけの効果が出ているのか、疑問視する声もある。
過去のデータでは流入水は雨量が多くなると増える。猛暑にも警戒が必要だ。地中に通した配管に冷却剤を流しコンピューターで温度管理するが、高温だと表面近くが溶けやすくなる恐れがある。
これからの季節は梅雨や台風による大雨と高温の両方が心配だ。東電はできるだけ早期にすべての凍結を完了する意向だが、効果を過信せず地下水くみ上げなど他の対策を強化して汚染水が増えないよう万全を期してほしい。
汚染水を多核種除去設備で処理しても取り除ききれないトリチウム(三重水素)の扱いも問題だ。処理済みの水を捨てることができず、保管タンクは1000基近くに達し、なお増え続けている。
国の基準ではトリチウム濃度を1リットルあたり6万ベクレル以下に薄めれば海に放出できる。技術的に不可能ではないが、風評被害に対する漁業関係者らの不安は大きく、実現の見通しが立たない。
東電はトリチウムの性質や健康への影響、除去法についてデータを示し繰り返し丁寧に説明する必要がある。理解を得られないと汚染水対策は行き詰まりかねない。