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50年に温暖化ガス80%減、日本はCO2回収・貯留で
三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚

2017/5/15 6:30
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 21世紀後半に温暖化ガス排出量の実質ゼロを目指す「ネットゼロエミッション」の取り組みが動き始めた。米国は2050年に80%削減、ドイツは80~95%削減などの長期戦略を既に国連に提出している。昨年の主要7カ国(G7)首脳会議は長期戦略策定の前倒しを合意。日本でも50年に80%削減する長期戦略を巡る議論が本格化する。

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 気温上昇を2度以内に抑える「2度目標」のシナリオでも、化石燃料は50年に世界の1次エネルギー供給の4割を占める。そこで二酸化炭素(CO2)対策とエネルギー供給を両立する手段として期待されるのが、CO2の回収・貯留技術(CCS)だ。

 環境省の「長期ビジョン」では、太陽光発電の不安定さへの対応としてCCS付き火力発電が盛り込まれた。経済産業省の「長期プラットフォーム」では、石油開発でCO2を油層に圧入して生産する石油増進法(EOR)による低炭素原油や天然ガスと、CCSを組み合わせて製造する「CO2フリー水素」に注目する。日本でもCCSはエネルギー選択の幅を広げる重要なオプションであり、将来の成長が「約束された市場」だ。

 CCSの課題は明確だ。排ガスなどからCO2を分離し、地下貯留に適した場所まで輸送、圧入するコストだ。長期にわたり安全な貯留であることの証明や住民不安への配慮も必要だ。

 事業環境は改善している。確実な削減を評価する国際標準化機構(ISO)の枠組みが作成中で、順次公表される。カナダや米国などで始まった大規模なCCS事業の実績も不安を緩和するだろう。コストは長期プラットフォームが紹介した日本の限界削減費用である1トン当たり378ドルに十分収まる水準だが、数をこなせば技術開発費の償却が進み、また輸送や貯留の設備の共有化でコスト負担を低減できる。

 最大の課題は現在、1トン当たり3000~4000円以上もする分離回収コストだ。大幅な省エネとなる膜分離法や次世代炭素材料「グラフェン」の利用、「ケミカルルーピング発電」などの技術開発で同1000~2000円程度を目指す。

 政府も技術イノベーションを支援するが、仕組みには工夫が必要だ。

 まずはコストと利用可能時期についての明確な目標設定だ。目安は再生可能エネルギー価格。発電コストはさらに下がるが、発電量が増えれば、エネルギー貯蔵など電力システム全体のコストが増す。40~50年ごろに最終的な仕上がりコストを再生エネと同水準にすることが目標になる。

 もう一つは競争原理の導入だ。CCS付き火力発電、EORによる低炭素燃料、CO2フリーの水素やアンモニア、排出量取引とオフセットなどやり方は複数ある。新しい回収技術は多様で、インフラ投資には不確実性もある。企業の取り組みは一様ではない。これまで常だった「選択と集中」から「分散投資と競争環境整備」への変革を考えてもよいだろう。

 そして、研究開発人材だ。航空機などの軽量化に貢献する炭素繊維も、照明に革命をもたらした発光ダイオード(LED)も、限られた利用から本格的な普及まで30~40年かかった。CCSに限らず、最悪の技術開発政策は、緩急を繰り返す「ストップ・アンド・ゴー」だ。予算の制約から研究機関で増えている任期付き雇用は優秀な人材を流出させる。安心して研究開発に取り組める環境の整備も欠かせない。

[日経産業新聞2017年5月11日付]


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