春秋

2017/5/6 2:30
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日本画家、鏑木清方さんが愛した花の一つがアジサイだ。昭和11年に発表した随筆に、その原点を記している。幼い頃、東京・築地の外国人居留地に並ぶ家々の生け垣に、この花をよく見た。いずれ自分も大人になった時は庭に植えようと空想し、後に実現したという。

▼明治時代、ホテルや教会、外国人住宅が集まり、西洋人の歩く築地かいわいは文明の窓だった。その名残はすでに乏しく、築地といえば昭和の初めに誕生した魚市場が連想されるようになって久しい。昨今は人気観光地になり、再び異国の人々の姿を多く見るようになった。東京という街は変化と不可分だと改めて感じる。

▼外国人観光客の目には、日本はすしに代表される魚食の国と映るかもしれない。しかし現実は異なる。1人当たりでみた魚の消費量は、ここ十数年ずっと減り続けている。日本周辺にすむ魚の数も年々乏しくなっており、漁師の人口も後継者難などで先細りにある。日本人と魚との距離は年々離れつつあるのが本当の姿だ。

▼ネット通販会社で話を聞いた。皆が少し豪勢な和食を食べたくなる正月。やる気のある漁師から新鮮な魚を直接調達、調理して届けたらヒットに。「せっかくの需要期なのに築地市場は休み」なのも有利に働いたという。連休が明ければ移転論議が再開する。場所より需要開拓の方が未来を左右すると思われるが、どうか。

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