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トランプ政権は現実路線を歩め

トランプ米大統領が就任100日を迎えた。序盤のつまずきから立ち直ろうと、外交・安保や経済などの分野で現実路線へと軌道修正する兆しが見え始めている。とはいえ、国際社会の不安を解消するには至っていない。まず外は同盟国、内は議会やメディアとの摩擦を和らげ、政権の安定度を高めることが肝要だ。

米メディアには政権発足100日まではお手並み拝見にとどめ、厳しく批判しないという慣習があった。トランプ氏がメディアを敵視した結果、今回は出だしから非難合戦を展開中だ。

議会との関係の改善を

ギャラップ世論調査によると、トランプ政権の支持率は40%前後で推移している。在任中の平均支持率が45%台だったトルーマン、カーター両氏を下回り、第2次世界大戦後では最も不人気な大統領になっている。

政権に勢いがつかないのは、与党をまとめられないからだ。上下両院とも共和党が多数を占めているのに、医療保険制度改革法(オバマケア)の見直し法案の成立に必要な票数を確保できず、廃案に追い込まれた。

ライアン下院議長ら共和党の主流派は現制度の部分的な手直しなど現実的改革を志向する。他方、フリーダム・コーカスと呼ばれる極端に「小さな政府」を志向する議員グループは「オバマケアは全廃すべきだ」との立場である。トランプ氏はうまく仲立ちできず、結果としてオバマケアが存続することになった。

この構図が続く限り、政権100日に先立って発表した法人税率の劇的な引き下げを柱とする税制の抜本改革案が実現するかどうかも見通せない。1兆ドル規模とぶち上げたインフラ投資が宙に浮くことも十分あり得る。

大風呂敷を広げ、過剰に期待感をあおる過去のビジネス手法で政権を運営されては困る。

ホワイトハウス内では政治経験が乏しい側近たちが激しい権力闘争を展開し、政権の方向性がふらついている。選挙戦で陣営を仕切ったバノン首席戦略官、娘婿のクシュナー氏、共和党主流派が送り込んだプリーバス首席大統領補佐官、軍出身のマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)らがぶつかり合う。

主な省庁の高官ポストがなかなか埋まらないのは、こうしたホワイトハウス内のごたごたが影響しているようだ。閣僚を支える人材が乏しいことで、よいアイデアが出てこず、支持率がますます低下して側近の責任の押し付け合いが激しくなるという悪循環を指摘する向きもある。

政権の軸足がどこにあるのかがわからない典型例は対シリア政策だ。ロシアが支持するアサド政権を温存し、まずは過激派組織「イスラム国」(IS)を倒すはずだったのが、逆にアサド政権を攻撃し、世界を驚かせた。

国際紛争への不介入方針を撤回し、「世界の警察官」の座に返り咲いたことで、北朝鮮の暴走を抑止する反射効果が生まれたことは認める。とはいえ、あまりに極端な政策転換は、理由をもっと丁寧に説明しなければ、新たな国際秩序づくりにつながらない。

政権の不人気に歯止めをかけるために、外交・安保でサプライズを起こし、米国民の視線を外にそらそうとしているのだとすれば、それこそ問題である。

市場への介入は問題だ

経済政策の揺らぎも何とかしなければならない。公約の柱であった(1)北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱(2)中国を為替操作国に認定――などにすぐ踏み切らなかったのは評価できる。

しかし、高関税などの脅しをちらつかせながら、2国間で貿易赤字を減らそうとする「アメリカ・ファースト」の姿勢は変わっていない。世界貿易機関(WTO)のような国際機関を軽視し、米国の都合次第で従わないこともあるという態度は容認できない。

過去のビジネスにおいて、マーケットは操る対象だったのかもしれない。国家を動かす立場になったからには「ドルは高すぎる」「低金利政策が好きだ」と安易に口先介入すべきではない。

トランプ政権が現実路線を加速することを期待するが、そうなるかはまだ読めない。ワシントン・ポストの世論調査によると、トランプ氏に投票した人の96%がなおトランプ氏支持だった。白人の低・中所得層をにらんだ政策選択は続くと見た方がよい。

日本としては広くアンテナを張り、さまざまな保険をかけつつ、つきあうしかあるまい。

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