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GWに押さえておきたい「マストドン」の基本

山田 剛良(日経テクノロジーオンライン副編集長)

野火のように急速に利用者を増やしている新しいSNSがある。「Mastodon(マストドン)」。絶滅した象の仲間の名を冠するこのサービスは、ツイッターに似た使い勝手を持つ。

ピクシブもマストドンを通じた発信を始めた

「ツイッターのライバル」とも喧伝(けんでん)されるが、おそらくツイッターそのものを代替するモノではない。最大の特徴は誰もがツイッターのようなサービスを立ち上げられる点だ。様々なコミュニティーが自分自身のポリシーに基づき、見た目も使い勝手もツイッターそっくりな短文投稿サービス(インスタンスと呼ぶ)を持てるのだ。

ミクシィやツイッターといったSNSが流行し始めた初期の状況とよく似ている。断言はできないが一気に広がっていく勢いを感じる」。ネットウオッチャーのおおつねまさふみ氏は話す。

マストドンは24歳のドイツ人、オイゲン・ロッコ氏が作ったサーバー・ソフトウエアとそれによるSNSを指す。2016年秋ごろから開発を始め、オイゲン氏自身が運営するインスタンスなど、主にドイツとフランスを中心に「3月ごろまでに全世界で2万人程度の利用者を集めていた」(おおつね氏)。そこから1カ月で利用者は全世界で51万人強に。1500近いインスタンスが稼働する。

3月後半から4月にかけて米国の複数のネットメディアが「ツイッターのライバル候補」と紹介、国内でも元月刊アスキー編集長の遠藤諭氏が自身のブログで紹介して人気に火が付いた。同氏のブログを見た筑波大学の大学院生が個人でサービスを立ち上げ、4月末現在で10万人弱のユーザーを集める世界屈指のインスタンスに育った。

目端の利くネット系企業の参入も早かった。画像共有大手のピクシブが4月14日に独自インスタンス「Pawoo(パウー)」の運営を開始。ニコニコ動画のドワンゴやニッポン放送などがそれぞれ独自にインスタンスを立ち上げている。堀江貴文氏らネットの著名人も個人で立ち上げた。

マストドンの特徴の1つはこのような形で複数のインスタンスが立ち上がっても、インスタンス間が自動的に連携する機能を持つこと。異なるインスタンスに所属するユーザーの投稿をフォローできるほか、フォローしていない他のインスタンスのユーザーの投稿も、「連合タイムライン」という機能により、適宜見られる。

ツイッターやフェイスブックなど従来のSNSは単一の企業が全世界のユーザーを束ねてサービスを管理・運営している。世界中の利用者を単一のポリシーで管理するため、全体の平均をとった安全方向のポリシーにならざるを得なかった。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

マストドンはそれとは異なり、多数の管理者がそれぞれ運営するサーバー(インスタンス)がゆるく連携する分散型のサービスだ。「おそらくそこに、マストドンの可能性がある」とおおつね氏は話す。管理者が異なればインスタンスごとのポリシーでコミュニティー運営が行えるからだ。

例えばピクシブやドワンゴは、自社サービスのユーザーIDで参加できるようにするなど、自社サービス向けのコミュニティーに育てようとしている。アイドルやアニメなど趣味や趣向に限ったコミュニティーを立ち上げてもよいし、地域の集まりやレストラン・ショップが利用してもよいわけだ。

マストドンは実は、「フリーソフトウエア運動」の提唱者であるリチャード・ストールマン氏らが数年前から推進する「OStatus」と呼ぶ技術を基にしている。ストールマン氏らの原動力は、少数の企業によるインターネット支配への強い抵抗感だった。

ストールマン氏がこだわった「インターネットの自由」。トランプ政権以降のポストトゥルース時代のいまだからこそ、復権する流れなのかもしれない。

[日経MJ2017年5月1日付]

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