2019年5月27日(月)

受精卵のゲノム編集は国主導でルールを

2017/4/27 2:30
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ヒトの遺伝子を手軽に改変できるゲノム編集技術を、病気の治療や研究に利用するための指針や審査のしくみづくりが遅れている。特に技術や倫理面の課題が多い受精卵の遺伝子改変について国が対応に及び腰なのは問題だ。

ゲノム編集技術は急速に進み、海外ではエイズやがんの治療に応用が始まった。厚生労働省が、遺伝子治療の臨床研究指針にゲノム編集を含める改正作業に着手したのは評価できる。

ただ、同省が想定するのは血液などの細胞のゲノム編集だ。受精卵などは「時期尚早」として検討の対象にしておらず、不十分だ。

ゲノム編集によって受精卵の段階で遺伝子の異常を治せれば、病気を未然に防げる可能性がある。すでに中国では遺伝子を改変した例がある。一方で、望み通りに子の運動能力を高めたり顔つきを変えたりする「デザイナーベビー」などにも応用されかねない。

受精卵の遺伝子改変の影響は子や孫に受け継がれ、後から異常が起きても引き返せない。生命の尊厳という観点からも多くの問題を抱えるだけに、社会的な合意形成を踏まえたルールが必要だ。議論を先送りしてはいけない。

米科学アカデミーは今年2月に報告書をまとめ、他に治療法がない深刻な病気などの場合に限り、受精卵のゲノム編集を厳しい条件付きで容認するとした。治療がすぐに実現する可能性は低いが、今のうちから実施条件などを示した意義は大きい。

日本では遺伝子治療の指針とは別に、内閣府の生命倫理専門調査会が昨年、ゲノム編集を使う研究に関する「中間まとめ」を出した。病気の治療ではなく、不妊症のメカニズムの解明など基礎的な研究が目的の場合、受精卵のゲノム編集を認めうるとした。

ところが、具体的な指針の作成や審査のしくみづくりは進んでいない。内閣府は日本人類遺伝学会や日本遺伝子細胞治療学会などに作業を丸投げしようとし、学会の反発を招いた。

ゲノム編集に関心を寄せる不妊治療クリニックの中には、学会に属さないところも多い。国主導で指針の整備などを急ぐべきだ。

受精卵の操作を伴うような新しい医療技術は、今後も次々に登場するだろう。倫理的な課題を含め、何がどこまで許容されうるか幅広く議論し、必要な法制度を検討しておくことが大切だ。

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