ネット予約でママ会楽々 すかいらーくの新戦略
ファミリーレストラン最大手のすかいらーくがネットでの宅配注文や座席予約を強化している。主力の「ガスト」などではスマートフォン(スマホ)から花見会場や会議室などへのオードブルなどの宅配注文を受け付け、和食の「夢庵」などでは家族客・団体客の座席予約を受け付ける。既に成果が出始め、さらに「ママ会」などの利用を促していく考えだ。

「目印を指定すれば、花見会場の公園まで宅配します」。すかいらーくは「ガスト」や「バーミヤン」などで、ネットや電話で受け付ける宅配サービスで、公園など自宅以外での受け渡しへの対応を進めている。荷物にならず、現地で出来たてが受け取れるメリットなどを強調。今春の花見シーズンは、大きな公園など花見の有名スポットで利用が見られたという。
スマホからの注文では、全地球測位システム(GPS)と連動したアプリ「ガストアプリ」などで最寄りの店舗を検索し、同じアプリから注文画面を呼び出せる。注文が入れば同社のコールセンターから担当者が受け渡し場所などを確認し、各店舗に配送の手配を施す。ネットやコールセンターを経由することで、店舗の従業員の負担を抑えながら受注している。
宅配を強化するのは、「母の日など自宅でもハレの日に宅配サービスを利用する動きが広がっている」(RSプロモーションチームの大竹実氏)ためだ。昨年12月に販売した予約限定商品のローストチキンは想定を上回るペースで完売した。
宅配ピザなどと比べ、すかいらーくはメニューやブランドの多様さを売りとする。洋食や中華などのブランドを手掛けており、パーティー用の大皿や1人分の弁当、個数や組み合わせを選べる単品おかずなどを用意。今後はフェアメニューなどの販促が打ち出しやすい点や、メニュー画像を見ながら注文しやすいネット予約を増やして市場を掘り起こす。
一方、ママ会やシニアのサークルといった団体客にもネット活用をすすめる。和食ブランドの「夢庵」「藍屋」では2月、ネット予約の受け付けを全店に広げた。自社のサイトから飲食店予約サイト「ホットペッパーグルメ」に誘導し、人数や時間などを指定することで予約を受け付ける。
あらかじめ食材を確保し品切れが防げる長所などを生かし、予約専用メニューを用意するなどサービス面も強化。今春には幼稚園の卒園式を終えた母親連れの利用を見込んで30~40代の女性客らを想定した予約限定商品が好評だったという。
すかいらーくは「これまで団体客は帰省客が多い正月休みなどに3世代などで来店するケースが多かった」(和食ブランドメニュー開発グループの中名生正堂氏)という。今後は時期や利用動機に応じて特典やメニューを切り替え、多様な利用を取り込んでいく。
ネット利用の拡大に向けた課題は、ネットの長所を生かした利便性の改善だ。「来店して予約を入れる客には利用したいテーブルを指定する客もおり、現状ではそうした要望にネットで応えるのは困難」(同)。最終確認などで電話確認が必要となるため、「そうした手間も省くことができるか検討していきたい」。
すかいらーくはアプリやビッグデータを使って年代や性別といった属性ごとにクーポンを切り替えるなどの販促策を得意としてきた。ネットを通じた予約・注文を一段と増やすためには、得意分野と連携させながらサービスを磨く知恵が不可欠となる。(牛山知也)
[日経MJ2017年4月26日付]