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宅配便 なぜ悲鳴? ネット通販・再配達で負担

宅配大手のヤマト運輸は値上げやサービス内容の見直しを打ち出した(ヤマト運輸の配達員)

宅配サービスがパンクしかけているという記事をみたわ。どうしてそんな事態になっているの。ネット通販をよく利用しているんだけど、宅配サービスが使いづらくなってしまうといやだな。

宅配サービスの現状について、斉藤嘉子さん(54)と海老沢亜希子さん(31)が石鍋仁美編集委員に話を聞いた。

――宅配便の現場で今、何が起きているのですか。

「増加する荷物に配達員の数が追いつかない状況が続いています。配達員1人が配れる個数は1日100個程度が上限といわれています。しかし、最近は120~130個、年末など繁忙期には場所によって200個にもなっています。そのため、配達員は昼食をゆっくり食べることもできず、不在宅への再配達などで夜中まで残業せざるを得ないなど、現場はパンク状態に陥っています」

「宅配便で約5割のシェアを持つ首位のヤマト運輸は今年の春季労使交渉で、荷物の総量抑制や、配達員が昼の休憩を取りやすくするため正午から午後2時の時間帯指定の配達の廃止、再配達の受付締め切り時間を1時間繰り上げ午後7時にし、社員が定時に帰宅しやすくすることなどで合意しました」

――どうして、そんな事態になっているのですか。

「国内の宅配便の取扱個数はこの17年間で約2倍に増えています。背景にネット通販の隆盛があります。ネット通販市場は2015年時点で年間13兆円と、5年間で8割も増えました。19年には20兆円を超すとの予測もあります」

「そのため、ネット通販首位であるアマゾンジャパン(東京・目黒)の配送を引き受けているヤマトで、人手不足が顕著です。需要が高まれば運賃は上がるはずですが同社では単価が下がっています。16年3月期は578円と3%近く値下がりしました。同社の荷物の9割はネット通販を含め法人需要なのですが、大口顧客向けに割引を実施しているため、取扱個数が増えても単価が上がらないのです」

「受け取る側に目を向けると、共働きや単身世帯の増加で昼間、不在の家が多く、再配達が増えています。配達個数では全体の2割、走行距離では25%が再配達のためと国土交通省は試算しています。不在宅が多いと配達ルートが複雑になり効率も落ちます」

――改善のため、どんな対策が考えられますか。

「ヤマト運輸は27年ぶりに基本運賃を引き上げることを決めました。値上げ幅は今後詰めます。法人向けの割引率も縮小する方針です。運賃の引き上げで社員の賃上げを実現し、人手を確保する狙いです。アマゾンの当日配送サービス受託からの撤退などネット通販会社との取引内容の見直しも検討しています」

「宅配ボックスの設置など消費者側の取り組みも広がっています。宅配ボックスを生産するパナソニックでは既存製品の生産が追いつかず、新製品の発売を延期したほどです。各戸にボックスが設置されれば、時間を問わずそこに荷物を入れられるため、効率よく回ることができます」

「ヤマトや佐川急便など配送業者が相乗りし、共同で配送する取り組みも一部で始まりました。人工知能(AI)が進化すれば、再配達分も含め最短で効率的な配送ルートを瞬時に教えてくれるはずです。受け取り手のスマートフォンなどに配達時間がこまめに届くようにすれば、在宅率ももっと高められそうです」

――私たちの生活に今後、どんな影響が出そうですか。

「日本のような緻密な宅配システムは海外に存在しません。システムとして輸出していくことを考えれば、サービスの質は落としてほしくありません。消費者の便利さを減らさない方向で、改善を続けることが望ましいでしょう」

「現代人のライフスタイルを考えると、深夜の配達指定を設けてもおかしくありません。宅配ボックスのある家へは配送料金を割引する手もあります。受け取り段階の効率化で宅配会社に協力すると安くなったり、ポイントがもらえたりする特典を考えるのもいいかもしれません。消費者にメリットがある形で仕組みを変えていくことが大事になるでしょう」

ちょっとウンチク

住宅選びの条件にも

「化粧を落とした顔で配達員に接したくない」「いきなりチャイムが鳴っても怖いからドアは開けない。不在配達票を見てから再配達を依頼する」「コンビニ受け取りはラベルの住所と名前を店員に見られるから嫌」。ニッキィさんを含めた女性たちの生の声だ。宅配ボックスの普及は配達員だけでなく消費者にも歓迎されるだろう。

大京は郵便受けと一体化した宅配ボックスを全世帯分、装備したマンションを建設する。三井不動産グループがまもなく販売するマンションは「入れっぱなし」防止のため、取り忘れがあると2日目から住民に通知メールを送るという。スムーズに荷物を受け取れるかどうかが住宅を選ぶ条件のひとつになりつつある。

(編集委員 石鍋仁美)

今回のニッキィ


斉藤 嘉子さん 主婦。留学から帰国中の娘とカフェ巡りを楽しんでいる。「私も大学院に通っているので、お互いのキャンパスライフの話で盛り上がり、つい長居してしまいます」
海老沢 亜希子さん エネルギー関連企業勤務。ピアノ演奏が趣味で今、アマチュア向けのコンクールへ参加するか思案中。「本選に進むと、大きなホールで思い切り弾けるんです」
[日本経済新聞夕刊2017年4月24日付]

ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は5月8日の予定です。

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