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シリコンバレーのVBと組むには目的に応じた手段を
西城洋志(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーCEO)

2017/4/21 6:30
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 私は昨年、日系企業の経営幹部や新規事業担当者などと面談させていただいた。その人数は約500人に達する。そのなかで多く耳にしたのが「シリコンバレーのエコシステム(経済の生態系)を活用したい」という言葉だ。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

 シリコンバレーのエコシステムは「優秀で情熱を持った人材や大学」「起業を支えるメンター・インキュベーター」「個人投資家・ベンチャーキャピタル(VC)・コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」「戦略的パートナーとなる企業」などで構成されている。このシステムには様々な側面があるため、事業会社の活用方法は、その目的に大きく依存する。

 当社は現状では獲得しにくい「非連続領域」での事業機会獲得を主眼にしている。通信・農業・ロボティクスというテーマを設定、その範囲において、アーリーステージのベンチャー企業への出資という手段を選んでいる。その機会を自社の事業開発に生かすため、出資先との戦略的パートナーシップを締結したり、共同プロジェクトを推進したりしている。

 補完的要素の獲得や既存事業への直接的貢献や寄与などを目的としている企業もある。その場合には自社が持つ金銭以外のリソース(経営資源)、例えば商流や顧客基盤、技術や製造能力をベンチャー企業に提供し、共に事業を行うことで相乗効果を狙う。これは比較的近い領域へ取り組む場合に特に有効である。

 シリコンバレーには、量産化で失敗する会社が多い。量産工程の設計支援や資材・部品の調達支援、品質管理の助言などは意味がある。

 自社製品や技術を無償あるいは無償に近い条件で提供し、それを使ってもらうことで成長・成功したときにリターンを期待する手法もある。ベンチャー企業のコアコンピタンス(競争力の源泉)でない部分を提供し、彼らが競争差別化要素に集中できるようにする考え方だ。

 先日、米スタンフォード大学の櫛田健児さんがあるメディアに「シリコンバレーの日本企業が陥る、10のワーストプラクティス」というテーマで寄稿していた。ワーストプラクティスは存在するものの、ベストプラクティスは残念ながら存在しないという趣旨だった。だからこそ、第一に「目的」の設定が重要であり、さらには「目的」と「手段」の一致が大事なのだ。

 非連続領域での事業機会獲得を目的としているのに、ベンチャー投資機能を持たず、戦略的パートナーシップを組もうとする。これはまさにワーストプラクティスである。戦略的パートナーシップは相互互恵が鉄則だ。相手に何を提供できるのかが不明瞭では話にならない。

 非連続領域においては、自社が提供できる資源はなかったり、あっても少なかったりする。だからこそ、まずは金銭投資という手段で関係を構築することが不可欠だ。彼らから市場や顧客、事業、技術を学び、彼らの成長と共に自社としての事業開発方針を決める。

 自社にとって比較的近い領域の事業機会の獲得を目的としているのであれば、自社と組めるステージ(成熟度)まで成長しているベンチャー企業と事業・技術提携をする。それには、自社の今の事業や技術に詳しい人間を現地に駐在させるといった方法が必要になる。

 「シリコンバレーのエコシステムの活用」は、自社の目的に合致する手段を用いて、手段の遂行に必要なリソース(人・モノ・金・権限)をあてることである。ベンチャー出資や買収がそのすべてではない。

[日経産業新聞2017年4月18日付]


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