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モラルより効果至上主義のグーグル、広告配信で逆風
藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

2017/4/20 6:30
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 昨年12月にこのコラムで筆者が「デマまん延の米大統領選、モラルなき広告主が助長」と、広告業界を取り巻く史上最悪の構図を指摘したのをご記憶だろうか。いま世界の広告業界が、この最悪の構図をめぐって大きく動き始めている。

 まず振り返っておこう。ことの発端は、動画サイトの「ユーチューブ」に、テロを正当化する過激な政治的主張や人種差別、ヘイトを意図した動画が数多く掲載されてきたことだ。運営者である米グーグルは、言論の自由を根拠にそれらの積極的な掲載排除をためらってきた。

 問題となったのは、そうした過激な動画作品にも、グーグルが広告を配信してきたことだ。広告主には、英国政府や公共機関、さらには多くの大企業が含まれていた。グーグルは、ユーチューブ以外でも、同社の広告配信サービスを利用する大小さまざまなブログやメディアに広告を配信しているが、ここでも同様なことが起きていた。

 ピンとこない人に少し解説を加えると、グーグルに代表されるネットワーク型の広告配信事業者は、多数の広告主と多数のメディアとを結びつける事業を手がけている。無数にあるコンテンツの中から、広告の内容にフィットしたものを見出し、そこに広告を配信する仕組みだ。

 これらはすべてシステムのなかで、言いかえれば自動的に行われる。したがって、求める広告効果が得られさえすれば、広告主は自らの広告がどこに表示されているか気にせずにいられたというわけだ。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

 その結果、過激派組織「イスラム国」(IS)の礼賛や人種差別などの動画に、英国内務省をはじめとする国の広告が配信された。「納税者の金が過激派らに払われている」と、英国の大手メディアが報道したことから、事態が一気に動き始めたのだ。

 グーグルに限らず大手交流サイトが、このような過激なコンテンツの排除に消極的なことに業を煮やしてきた英国議会や政府は、その姿勢への非難を強めるのと同時に、これらに使ってきた多額の広告予算を凍結することを決めた。悪いことに、英国で火がついた広告主らの離反は、米国にも飛び火した。

 米ATTや米ベライゾンなどの大手が声明とともに広告を停止した。さらにそれにならって、トヨタ自動車日産自動車ソニーなどの日本企業や世界的な代理店など約1800社が、グーグルへの広告費凍結を決めている。

 もちろん、この事態にグーグル側も無策ではいない。従来の姿勢を謝罪するとともに、過激な内容のコンテンツへの掲載基準を厳格化したり、第三者機関と提携し、ブランドの安全性を認証する仕組みなどを提供したりする。

 一方で、筆者が先の記事でも指摘したように、広告主にも、「効果が出ればそれで良し」としてきた姿勢が問われる。こうした事態になるまで自ら気づかなかったはずはないからだ。広告主も広告を配信するテクノロジー勢力にとっても、効果至上主義からモラルを取り返すべき重要な岐路に立たされている。

[日経MJ2017年4月17日付]


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