好印象は着こなしマナーから 気になるポイントはどこ

身にまとう服が第一印象を左右するのは、ビジネスシーンでも同じ。
働く男女に「仕事相手の気になる着こなしマナー」を聞いた。
胸元・足元 ちょっとの気配り
取引先など仕事で会う人の服装で、仕事に影響するほど気になるポイントを聞いたところ、胸元の露出を挙げる声が男女とも最多だった。応接室や会議室で向き合う時も、相手の上半身は視界に入りやすい。開きすぎていて「目のやり場に困った」との声は多い。
次いで多かったのが足の見えすぎだ。女性の「生足」や男性の靴下は共に、同性からの注目度が高かった。仕事の場面で本来見せるべきでないものが見えてしまうのは避けたいところだ。
クールビズが定着し、ビジネスファッションは季節を問わずカジュアル化している。堅苦しさが減る一方で、ふと目に留まった点が思わぬマイナス印象を与えるリスクが高まっている。服装が醸し出す違和感で「常識が通用しなさそうで仕事がやりづらい」(40代女性)と思われては本末転倒。ちょっとした気配りで好印象につなげたい。
<男性>
ジャケットを脱いだとき、胸元が気になるとの声が圧倒的だった。クールビズの定着でノーネクタイの人が増え、胸元に目が行くことも多い。「取引先の男性の胸毛が見えて困った」(30代女性)、「ワイシャツの第2ボタンまで外し、インナーシャツが見えていた」(20代男性)。ビジネスシーンでは第2ボタンは外さない方がいい。「ワイシャツの下からアニメ柄のTシャツが見えた」(50代男性)など「肌着が透ける」「襟元から肌着が見える」のもマイナス。
座ったとき、ズボンの裾からのぞく靴下や足につい目が行く人は多い。「スーツは清潔感があるのに靴下が派手」(20代女性)、「スーツに白いソックスのビジネスマンが意外と多い」(40代男性)。男性で特に多かったのが短い靴下を気にする声。「スーツ姿でくるぶしが見えるアンクルソックスをはく人がいるがみっともない」(40代男性)。ファッションコンサルタントのたかぎこういちさんは「濃色で薄手が望ましい」と話す。
ワイシャツは欧州で下着として誕生した、との理由から、ワイシャツの下には肌着をつけないというポリシーの人もいるようだ。高温多湿の日本では「汗を吸収する肌着がないと気持ち悪い」(30代男性)と感じる人は少なくない。「汗でシャツが肌にくっついている男性を見ると避けたくなる」(30代女性)との声も。肌着の存在を悟らせない形で身につけた方が、現実的かもしれない。
財布や名刺入れなど、持ち物一式をジャケットやパンツのポケットに入れる男性は多い。「上司のスーツのポケットがパンパンで、何を入れているのか思わず聞きそうになった」(30代女性)。薄いもの以外を入れると、服全体のシルエットを崩す恐れがあるので注意したい。
ファッションのカジュアル化で、丈が短いコートやダウンジャケットを愛用する人が増えている。寒い季節にスーツに合わせると、羽織った上着の裾からジャケットがはみ出して見えることも。「ビジネス用のコートはロングが基本。短い丈はカジュアルすぎる」(たかぎさん)
「動物柄や花柄のネクタイを着ける人がいた」(30代女性)。おしゃれに気合を入れたつもりで派手な色や目立つ柄を選ぶ人もいるが、慎重に選びたい。ビジネスには「無地や水玉、小紋など、ベーシックなデザインがふさわしい」(たかぎさん)。
ネクタイは、一番太くなっている「剣先」部分がベルトの金具の真ん中にかかるくらいの長さが理想的だ。短くても長すぎてもだらしない印象になってしまう。輸入品などで長めの場合は、結び方で調整できるので覚えておこう。
紳士物のベルトの多くは、3つまたは5つ穴が開いている。ベルトの端が長く余っていると、だらしない印象を与えかねない。真ん中の穴で締めるとバランスが取れるため、ウエストに合わせた長さのベルトを探したい。

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<女性>
ジャケットの下に着るブラウスなどのインナーはデザインも多様。「大きく開いたシャツから胸が見えそうで気になった」(30代女性)。意外と見逃せないのが「お辞儀したときに気になる」(20代女性)こと。ファッションプロデューサーのしぎはらひろ子さんは「襟ぐりが大きく開いていなくても、名刺交換など上体を傾けたときに見える場合がある」と注意を促す。柔らかい素材だとより開きやすくなる面もある。胸元とインナーがなるべく密着した素材や襟ぐりを選ぶと見えにくくなる。
スーツのスカートは裾から入る切れ目「スリット」が後ろに入っているのが一般的だが、前や横に長いスリットがあると、丈が短くなくても太ももが部分的にあらわになる。「大きくスリットが入ったタイトスカートをはいて出勤する人は、会社に何をしに来ているんだろうと思う」(40代女性)。ファッション性の高い服に多いデザインだけに、ビジネスに不適切との印象を与えがちなので注意が必要だ。
ビジネスにふさわしいスカートの長さは膝丈が目安。「他社の担当者がミニスカートをはいていて下品に見えた」(30代女性)など、短すぎると違和感を覚えるとの声は根強い。立っていれば気にならなくても「短いスカートでソファに座られると、同性でもハラハラする」(40代女性)。しぎはらさんは「ソファに腰掛けたとき、太ももが10センチ以上見えないのが目安」と助言する。
腰回りがフィットしていると「スカートの上から下着のラインが見える」(20代女性)ことがある。皮膚の露出ばかり気にしているとつい忘れがちで、パンツ着用時の盲点となりやすい。裾が切りっぱなしになっているガードルを着用するなど気を付けたい。
ストッキングをはかない「生足」を気にする声が女性に多かった。「かなりカジュアルで悪い印象を受けた」(20代女性)。気温が上がり、足が蒸れやすい時期は素足で過ごせたら、と思う人が多いだけに、はいていない人を見ると余計に気になるとも言えそうだ。
特に男性に「気になる」と答えた人が多かった。淡色や薄手のブラウスの下に、肌着が透けないようにと黒いキャミソールを選ぶと「濃い色が透けてブラウスが濁った色に見えてしまい、不潔な印象になりがち」(しぎはらさん)。肌に近い色か白のインナーが無難だ。
肩が完全に見える「ノースリーブ」のブラウス姿は、40歳以上の男性で「気になる」と答えた人が多かった。一方で袖は短いが肩が隠れる「フレンチスリーブ」は9割近くの人が「気にならない」と回答。肩の露出の有無は、職場のファッションで1つの目安となりそうだ。
ビジネス向きのパンプスは「3~5センチのヒールが目安」(しぎはらさん)で9センチは高すぎる。身長が低めの人がハイヒールを選ぶと、かかとの高さがさらに強調されてしまうので気を付けたい。

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身だしなみも仕事のうち
「ファッションは本来自由だが、ビジネスのファッションには厳然たるルールがある」。ファッションコンサルタントのたかぎこういちさんは、ビジネスでは基本のスタイルを知ることが大事、と話す。
男性ならダークスーツ、女性ならジャケットと膝丈のスカートが基本。欧米やアジアのビジネスパーソンもこのスタイルだ。原則を踏まえた上で、働き方や仕事の場面に合わせた服装を選びたい。
例えば女性用スーツに多いタイトスカート。座ると裾が上がって太ももが見えやすくなる。「フレアやギャザーが入ったスカートなら、和室の食事会でも座りやすい」(ファッションプロデューサーのしぎはらひろ子さん)。立ち居振る舞いを具体的に想像すると、ふさわしいアイテムを見つけやすくなる。
男性ならネクタイの結び目にくぼみがあるかどうか。ジャケットの胸ポケットにたたんだチーフがあるのも好印象だ。ペンを指してはいけない。
「身だしなみも仕事のうち」(たかぎさん)。基本を知った上で、場所や相手に合わせたスタイルを探したい。
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ランキングの見方 数字は延べ回答者数。
調査の方法 仕事上で出会った人のファッションマナーで気になる点について、専門家の助言を基に男性26項目、女性23項目をリストアップ。3月上旬にインターネット調査会社のマクロミル(東京・港)を通じて、「仕事に影響が出るほど気になる」かどうかを複数回答で選んでもらった。回答者は会社員、公務員または経営者として働く全国の20~60代の男女で、有効回答者数は1030。各年代で男女はほぼ同数。専門家はたかぎこういち・タカギ&アソシエイツ(東京・渋谷)代表、しぎはらひろ子・国際ファッションエデュケーション協会(東京・渋谷)代表理事。モデルは新井智博(男性)、スウィージー美紀(女性)。写真は矢後衛撮影。
[NIKKEIプラス1 2017年4月1日付]
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