2017年11月22日(水)

日本企業のオープンイノベーションに3つの意義
サムライインキュベート代表取締役 榊原健太郎

コラム(ビジネス)
2017/4/4 6:30
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 最近、日本の大企業の方々とミーティングすると、このようなことがよく話題になる。

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

 「何かイノベーションを起こしたい」「スタートアップ(ベンチャー企業)ともっと関わりを持ちたい」「上層部からオープンイノベーションをしてくれと言われており、何かしなくてはならない」「オープンイノベーションの部署ができ、異動が決まった」

 新規事業を立ち上げるため、スタートアップなどと組んでオープンイノベーションを起こしたいという思いはひしひしと伝わってくる。だが、何から手をつけていいのかわからないようだ。

 オープンイノベーションとは、様々な壁を取り払い、自由闊達な意思疎通と協業(コラボレーション)を通じて、新しい考え方や技術、サービスを生み出すことだ。ここでいう壁は、国・企業・官民・階層・部署の違いなどを指す。ここでは組織の規模の大小は何の意味も持たない。

 日本の大企業は、米国のシリコンバレーのスタートアップや起業家に近づき、協業することをオープンイノベーションと受け止めている傾向にあるようだ。シリコンバレー以外の地域のスタートアップと組もうとしている大企業はあまり見ない。社内の部署同士や大企業同士で新しいビジネスを創出しようとする事例も少ないと感じる。

 日本の大企業は長く「自前主義」でやってきた歴史があり、オープンイノベーションをするのは難しいと思う。それでも当社に相談や問い合わせが多く寄せられるようになっており、意識は徐々に変わってきている実感はある。日本でもオープンイノベーションが盛んになる可能性は高い。

 ただ、誰も見たことがないような事業が立ち上がったり、それによって業績が改善したりするには、それなりの時間がかかる。オープンイノベーションはすぐに効果が出るわけではないことを認識しておきたい。

 日本の大企業がオープンイノベーションを実践する意義は3つある。

 まず、イノベーションを創出しようとする姿勢そのものが企業価値向上に寄与するという点だ。株主や投資家から高く評価されるのはもちろん、優秀な人材を採用しやすくなり、取引先に提供できる付加価値の拡大にもつながるからだ。

 次に経営幹部を含めたメンバーの意識改革だ。オープンイノベーションを進めるには、組織内のあらゆる壁を取り払わなければならない。それは部署同士の連携を促す。上司や部下といった、組織内の階層による違いを乗りこえた協業も生まれやすくなる。

 権限委譲が進み、意思決定のスピードも速くなる。新しいことに挑戦しようとする気概が社内に広がるだろう。

 3つめが収益への貢献だ。オープンイノベーションに取り組むと、国内外のスタートアップや起業家、大企業などとの接点が増える。社外関係者との接点が増えれば、世の中の変化や流れをいち早く把握できる。情報への感度が高い企業は新たな商機を得られる可能性が高くなる。多様な属性の人や組織との交流は新たな知恵を生む。それがコスト削減策のヒントになることも考えられる。

 研究開発(R&D)の目的が新たな収益源の確立であることを思い起こせば、オープンイノベーションがR&D戦略において重要な地位を占めるていることに気づくだろう。様々な企業の技術者がアイデアや技術を競い合う「ハッカソン」と呼ばれるイベントを開いたり、スタートアップを支援したりすることは、R&D戦略にとって欠かせない要素になっている。

 本来の目的に沿ったオープンイノベーションが日本の大企業でも行われるようになったとき、既存の枠組みや技術を破壊する「ディスラプティブ」な変革が起きるようになると思う。

[日経産業新聞2017年3月30日付]

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