2019年4月20日(土)

香港の若者が抱く不安解消へ処方箋を

2017/3/28 2:30
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香港政府の次期トップを決める行政長官選挙で中国政府の後押しを受けた林鄭月娥氏が当選した。世論調査では民主派も推す曽俊華氏の支持率が高かっただけに、民意とのずれが浮き彫りになった。

次期長官の課題は、深刻な香港社会の亀裂を修復し、香港の市民が「一国二制度」の未来に抱く不安を和らげることだ。

1997年の香港返還時に中国は有権者「1人1票」の普通選挙をいずれ導入すると約束した。そして3年前、形の上で普通選挙を装いながら実際には親中派しか出馬できない改革案を提示した。

反発した学生らが長く道路を占拠した「雨傘運動」の際、政府代表として一歩も譲らなかったのが林鄭氏だ。結局、改革は頓挫し、今回の長官選も普通選挙ではなく旧来の方式で行われた。

雨傘運動の後、香港では奇怪な事件が相次いだ。中国に批判的な書籍を扱う書店の関係者らが連れ去られたり、中国出身の大富豪が失踪したりした。「一国二制度」と高度な自治の根幹をおびやかす出来事といえる。

大陸への窓口として栄えてきた香港の経済的優位は揺らいでいる。隣接する中国の経済特区・深圳に、数年後には経済規模で抜かれる可能性も出てきた。そのうえ自由な空間が狭まるなら香港の魅力は半減しかねない。香港の市民の不安や焦りは理解できよう。

雨傘運動を担ったのは香港への郷土愛が強い「本土派」の若者たちだ。議会にも進出したが、一部は当選まもなく議員資格を奪われた。長官選の翌日には香港当局が雨傘運動の主導者らに起訴を通告し、亀裂は広がっている。

中国の李克強首相は先の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の演説で「香港独立に前途はない」と語った。香港独立問題にあえて触れたのは強い警戒感の表れだが、かたくなな姿勢は香港の若者の不安を募らせている。

林鄭長官が就任する7月1日は返還20年の節目でもあり、式典が予定される。これを奇貨として新長官と中国は市民の不安に正面から向き合う道を探るべきだ。処方箋のひとつは3年前に頓挫した普通選挙導入の再提起だろう。

中国大陸では政治改革の議論が止まっているが、多様化する利害を民主的な投票で調整する仕組みが必要なことはあきらかだ。その試金石としても、香港の民主化の行方は極めて重要だ。

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