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実力社会シリコンバレーに残る女性幹部への偏見

ジョアナ・ドレイク(コア・ベンチャーズ・グループ ジェネラルパートナー)

シリコンバレーにいる人たちはこの地を実力主義社会ととらえている。確かにシリコンバレーでは、ビジネスの枠組みを変えたり、多額の時価総額を生み出したりするテクノロジー企業が設立されている。それらの企業で移民が果たした役割は大きい。移民の成功はシリコンバレーの経済の仕組みがオープンである証拠で、ビジョンやインテリジェンス、勤勉さ、やる気を持つ人たちが存分に活躍している。

それでも、シリコンバレーにはまだ偏見や欠陥がある。そのうちの1つが女性によるリーダーシップを承認するカルチャーが欠けていることだ。女性幹部を育てる制度や仕組みがなく、女性が幹部であり続けるのも難しい。

米国の学士及び学位授与者の過半数は女性である。こうした事実があるにもかかわらず、シリコンバレーの企業の管理職に占める女性の割合は11%未満にとどまっている。2016年にベンチャーキャピタルによって支援された起業家のうち、女性は5%に満たなかった。ベンチャー企業(スタートアップ)の取締役会の席を占めているのはほとんど男性で、女性の比率は1割に達しなかった。

米国にも「金が物を言う」という言い回しがある。女性によるリーダーシップへのサポートが不足している根本的な原因はお金だ。スタートアップへの投資を決めるベンチャーキャピタリストに女性がほとんどいない。主要なベンチャーキャピタルのゼネラルパートナーのうち、女性は5~7%しかいないと言われている。

女性は以下のような問題に直面している。(1)女性は科学・技術・工学・数学(STEM)に向いていないという誤解(2)リーダーの候補者になり得る女性は少ないという思い込みのため、女性があまり採用されないという状況(3)女性の従業員は昼夜を分かたず働く文化についてこれないのではないかという誤った推定(4)女性は男性よりも謙虚な傾向があり、雇用される人数や昇進の機会が少ないこと(5)セクシュアルハラスメントが女性の評判や昇進を妨げていること(6)男性の管理職や投資家が男性の同僚や男性によって支配された企業文化をより快適に感じること――。

なんと多くのハードルがあることだろうか。しかし、これらを克服することは成功への近道でもあるのだ。それは以下の事実によっても明らかだ。女性が多くいる組織はより効率的になり、より良い成果をあげる傾向がある。取締役会に女性がいる企業は、取締役会に女性がいない企業より資本効率が顕著に高い。

女性が活躍できる社会にするための努力はすでに行われている。そのうちのいくつかは私たちによって実施されている。まず「ブロードウエーエンジェルス」だ。これはスタートアップに個人で投資している女性で構成されているグループだ。起業家の多様性を高めたり、次々と起業する「シリアルアントレプレナー」を支援したりしてきた歴史を持つ。

2つめが「ザ・ボードリスト」だ。テクノロジー企業が女性の経営幹部候補を見つけるための求人サイトだ。そして「C200」。これは35年前に結成された組織で、女性の最高経営責任者(CEO)や起業家を増やすことを目的とした世界的な女性管理職の会員制組織だ。

女性によるリーダーシップは日本のスタートアップにとっても成功要因になる。私たちの経験にもとづく解決策がシリコンバレー以外の地域にも迅速に伝わることを期待している。

[日経産業新聞2017年3月28日付]

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