2018年9月21日(金)

日本の温暖化対策、「省エネ」一本やりの限界
日本総合研究所理事 足達英一郎

2017/3/27 6:30
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 先週は地球温暖化問題を巡る重要な発表が内外で相次いだ。国際エネルギー機関(IEA)は17日、2016年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量が32.1ギガ(ギガは10億)トンにとどまったとする推計を公表した。

 世界経済が3.1%成長したにもかかわらず、3年連続で排出量はほぼフラットな状況となっており、これは、(1)再生可能エネルギーの普及(2)石炭から天然ガスへの転換(3)省エネルギーの進展(4)産業構造の変化――という4つの要因が作用していると指摘している。

 この前日、トランプ米大統領は18会計年度(17年10月~18年9月)の連邦予算案概要を議会に示した。連邦環境保護庁予算の約31%という大幅削減が目玉で、これを議会が承認すれば、50以上ある地球温暖化対策事業の撤廃と、職員の5人に1人の割合に相当するおよそ3200人の人員削減が見込まれるという。

 オバマ政権下の08~15年で、米国は10%を超える経済成長を達成する一方、エネルギー起源のCO2排出量を9.5%減らした。こうした実績を等閑に付す米国の政策転換が、いよいよ現実味を帯びてきた。

 翻って日本では、16日に中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会で、長期低炭素ビジョンがまとめられた。これは温暖化ガスの長期的な対策を、20年までに提出することをパリ協定等が求めていることに応じたものだ。

 日本が50年に80%削減を掲げる長期目標の堅持を前提に、低炭素投資促進とイノベーションで、国内での大幅削減を進めるという意欲的な内容になった。累積排出量やカーボンバジェット(残余排出可能量)の観点に言及し、カーボンプライシング(炭素の価格付け)を主要施策の方向性に据えた。

 一方、経済産業省に設置された長期地球温暖化対策プラットフォーム「国内投資拡大タスクフォース」は、17日に最終整理(案)を公表した。その中で、将来の様々な不確実性を考慮する戦略が必要であり、各国の長期戦略も具体的な政策決定ではなく「ビジョン」を示したものにすぎないとした。そのうえで、国内の排出源別という閉じた対策だけでなく、海外や、上流から下流、大企業から中小企業まで、製品ライフサイクル全体を通じた「グローバル・バリューチェーン(価値の連鎖)での削減の視点」こそが重要であることを強調した。

 鉄鋼、化学、電機・電子、自動車、都市ガス、電力、製紙の7業種について、グローバル・バリューチェーンでの取り組みによる潜在的な削減貢献量を積み上げると、30年度では日本の排出量の2倍程度になるとの試算も明らかにしている。さらに、直ちにカーボンプライシングを導入する地合いにはないとの判断も盛り込んだ。

 今後、わが国の長期戦略の最終決定は政治に委ねられることになろうが、現在の立ち位置についての認識を共有しておくことは有効だろう。

 かつて、わが国にはCO2排出の優等生という自負があったかもしれない。しかし、国内総生産(GDP)当たりの温暖化ガス排出量について、経済協力開発機構(OECD)内での日本の順位は、1995年に2位だったものが14年には18位に後退しているのである。これは、排出量を増加させずに付加価値を増加させることのできる経済構造を構築することに、他国が先んじて成果を上げたことを意味している。

 冒頭のIEAが指摘する4つの要因にしたがえば、日本は「省エネルギーの進展」の一本足だけで対策を講じてきた結末だといえる。今後、特に「産業構造の変化」を地球温暖化緩和の観点から主導できるかが、国際的な焦点になろう。

 米国の政策転換に追随する国と見られることの是非を含め、成長戦略と組み合わせた視点での判断が不可欠である。

[日経産業新聞2017年3月23日付]

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