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米入国時にスマホ検閲 暗号化・データ削除で備えよ

瀧口 範子(フリーランス・ジャーナリスト)

「アメリカ入国の際に、自分のデジタルデータをどう守るか」。今、こんな話題がインターネット上で頻繁に見られるようになっている。

自分のデジタルデータとは、コンピューターやスマートフォン(スマホ)に入っているファイルや情報のことだ。普段ならハッカーにでも侵入されない限り安全だろうと高をくくっているが、トランプ政権になってこれまで以上に入国時に提供が求められるのではと予想されているためだ。

実際、海外出張から帰国した米国籍の研究者が、入国審査官にスマホのパスワードを差し出すよう要求されたなどの事例が伝えられている。

トランプ大統領が入国禁止の対象にしたイスラム関連国の出身者に限った話ではない。その他の国からの一般旅行者、そして米国籍の帰国者でも、はっきりしない理由でそうしたことを求められるケースがあるのだ。

では、実際にデータを守るために何をすればいいのか。指南をまとめてみよう。

まずは、コンピューターやスマホなどのデバイスのハードディスクを暗号化しておく。たいていは設定機能から可能だ。そして、パスワードも複雑なものにする。

自分でもパスワードが覚えられないような仕組みを利用しろというアドバイスもある。例えば、とうてい記憶できない複雑で長いパスワードを生成する「パスワード・マネージャー」や、もうひとつのデバイスがなければ照合不能な「2ウェイ・パスワード」だ。

指紋認識や音声認識機能もオフにしておく。入国審査の際に採られた指紋でスマホがあっさりと開けられる可能性もあるだろう。ともかくできるだけ開けにくくすることが必要なのだ。

これだけでもかなり手が込んでいるのだが、まだまだ上がある。それは、旅行や出張の際には重要なデータを削除しろというもの。持ち歩くデバイスには最小限必要なデータだけを入れ、残りは家に置いておく。

削除するのが面倒ならば、旅行用には別のデバイスを用意しろというアドバイスも。こちらも最小限のデータだけを入れて出かけ、帰国する前に旅行中のファイルを削除する。ないものは見せられない、というわけだ。

ソーシャルメディアも忘れてはならない。注意深くデータを守りたい場合は、スマホからソーシャルメディアのアプリを削除しておくことが必要だ。複数のアカウントを使い分けろ、という指南もあった。

ここまでやらなくてはならないのか。確かに「パラノイア過ぎるかもしれないが」と断っているアドバイスもある。しかし、予測がつかないことが頻発するのがトランプ政権だ。

弁護士やジャーナリストなど職業上自分のデータを守りたい人もいるだろうし、反トランプ活動や発言などを行ったことを理由に面倒なことに巻き込まれたくなければ、予防しておくことも必要なのだ。

何も悪いことをしていないのだから、見られても恐れることはない、と考える人々もいるだろう。ただ、米国人には、むやみにプライバシーに侵入されることに敏感な人々も多い。相手が入国審査官でも同じだ。

ただし、これらの方策は決して万全ではない。というのも、入国審査やデジタルデータでは、不合理な捜査や押収などを禁じる合衆国憲法修正第4条の定義があいまい。抵抗し続けるとデバイスを取り上げられることもあるからだ。

外国人の場合は入国を拒否される可能性も高い。デバイスを押収された結果、ファイルが削除されることもある。

だからこそ、これら指南はできるだけ壁を高くする方法を伝授しつつ、「ウソはつかないこと」と注意している。

[日経MJ2017年3月13日付]

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