「心を震わせるドラマチック写真術」 SNS人気者が指南

ノスタルジックな水辺の風景。無数の泡の光をまとった女性のポートレート。不夜城のごとく浮かび上がる工場夜景……。ページをめくると、出てくるわ出てくるわ。「自分で撮れたら"イイネ"がたくさんもらえるだろうなあ」と夢想してしまう写真の数々。
インプレス刊「心を震わせるドラマチック写真術」は、そんな魔法のような写真を撮るヒントが満載の指南本だ。実際にツイッターやインスタグラムなどに投稿された人気作品を作例に、状況や機材設定などを撮影者本人が語っている。
たとえば表紙カバーにも使った、水上を歩くような女性のシルエットをとらえた浅岡省一氏の写真は、ゲリラ豪雨でできた水たまりを使い、夕日を逆光にして狙ったもの。別所隆弘氏の光あふれる滑走路の夜景は、飛行機が止まった瞬間を望遠レンズで2.5秒露光し、ノイズが出ないようISO感度を低めにした。
ほかにも虫視線の花写真の構図作り、物寂しげな風景に写すフィルター選び、俯瞰(ふかん)のテーブルフォトを立体的に見せる三脚術などのテクニックを公開。魔法のような写真も、種明かしを読めば自分で撮れる気がしてくるから不思議だ。
こうした技術本はプロの写真家が解説するのが普通だが、本書が画期的なのはアマチュア写真家を起用したこと。著者に名を連ねる7人のうち、プロは浅岡氏1人だけ。プロ・アマ関係なく、実際は全員がSNSでの人気と実力で選ばれている。全世界に50万人以上のファンがいるmasaya氏はじめ、著者7人のフォロワー数の合計は約85万人というから恐れ入る。
「アマチュアの起用は当初、営業サイドから不安視された」と編集を担当したビジュアル&ライフ編集部の小宮雄介氏。だがフタを開けると発売前から予約殺到。半年で重版がかかれば御の字というジャンルにあって、本書は11月の発売以来3カ月で2回版を重ね、発行部数は1万2千部を突破した。
ありそうでなかったアイデアで写真術本に一石を投じた同書。「流行のテクニックを多くの人に知ってもらい、販売が落ち込む一眼レフカメラの販売にもつなげたら」と期待している。
(律)
[日本経済新聞夕刊2017年3月1日付]
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