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米西海岸の新興企業にも量産化の壁 日本の出番
西城洋志(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーCEO)

2017/3/3 6:30
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 「ソフトウエアが世界を食べ尽くす」。これは数年前にある著名投資家が今の産業の破壊的変化を示した言葉だ。多くの破壊的創造を行うスタートアップはソフトウエアプレーヤーであり、ハードウエアに競争優位を求めていない。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

 一方、すべてのモノをネットでつなぐ「IoT」やロボティクスなど、ソフトウエアに価値のコアはあるものの、実際のビジネスにおいてはハードウエアが重要な役割を担っている技術やビジネスがシリコンバレーでのトレンドになっている。したがって、私は前述の「ソフトウエアが世界を食べ尽くす」を肯定しながらも、「ハードウエアが(ソフトウエアが次に食べる)世界を創り出す」と考えている。それはハードウエアがあることで価値創出の為に真に重要なデータを取得して、ソフトウエアの活躍の場を広げるからである。

 このハードウエアにおいて、シリコンバレーの投資家たちを悩ませる課題がある。それは「試作まではやれるが、量産化で大きな失敗をする会社が多い」ことだ。

 事業の段階は(1)アイデア・コンセプト(2)プロトタイプ・事業検証(3)パイロット運用(4)実運用・スケール――と大まかに分けられる。(1)で投資家からシードファンディングを受け、(2)でより大きな額の調達をして事業の基盤をつくり、(3)で事業運営、(4)で大きく成長していく。

 ハードウエアにおいては(2)から(3)への移行で大きなチャレンジ(難題)がある。製造に携われている方ならお分かりだと思うが、10個をつくるのと1万個をつくるのとでは、考えるべきことや準備すべきことが異なるからである。

 一定の量のモノをつくるには、安定的に供給される材料が必要なので、サプライチェーンマネジメントが必要になる。一定の量のモノを必要な機能・性能・コストでつくるには、適切な量産工程が必要になる。そのハードウエアが革新的なものであればあるほど、これらは重要かつ難易度の高いタスクになる。

 シリコンバレーのスタートアップでは、投資家から投資を得るための少量の模型や、事業性検証のための中量の試作品をつくることはできている。だが、「量産+実事業」へ進む際に前述の壁に当たり、次のマイルストーンに到達できずに終わることが多くなっている。この段階では、スケールアップのためのチーム増強や拠点拡大、材料の購入などにより、オペレーションコストも格段にあがっている。数カ月の遅れやコストの見積もりの誤差が命取りになる。

 なぜか。それは量産における生産技術や工程設計、品質管理、製造のための設計を甘く見ている点が大きいと感じている。彼らの間には、製造は非常に自動化・標準化が進んでいて「頼めばできる」ものと考えている風潮がある。だから、コストやスピードを重視して中国の深圳にある受託製造会社などに発注する。

 だが、できあがってきた製品はまったく予想していなかったモノだったり、予定通りに来なかったり、コストがまったくあわなかったりする。特に革新的なモノをつくる場合においては、生産技術や工程設計における日本の製造業の知見や経験は価値がある。実際、産業用ロボットでは、多くの日系企業がリードしている。

 イノベーティブなモノをつくるプロセスにおいて試作から量産への移行のところに日本の役割があるのではないか。「シリコンバレー→日本→量産製造拠点」という大きな協業の機会があると考えている。

[日経産業新聞2017年2月28日付]


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