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バク転や化粧講座、「ストアカ」に自称先生8000人

野呂 エイシロウ(放送作家・戦略PRコンサルタント)

誰もが知る大企業が次々と存続の危機に陥っている。知らない間に私たちは「安定」というものを失いかけている。いい大学を出て、有名企業に入っても明日は分からない時代だ。

自分の能力をひとつの会社だけに振り分ける時代ではない。何かを学んで自分自身を磨き、また得た能力を人のために生かす。そのひとつの舞台になっているのが、自分のスキルで講座を開きたい人と、学びたい人を結びつけるサイト「ストアカ」(旧ストリートアカデミー)だ。

このサイトには8000人もの「先生」が登録。プロから副業で手掛ける人まで様々だ。内容もビジネスからヨガまで実に150分野もある。中には、バク転の学校や包丁研ぎ講座のような、ユニークなものまである。

ネット上のカルチャーセンターかと思ったらそうではないらしい。「暇な人が集まる場ではありません。自分のスキルアップを考えている人々が集まるステージです」と運営するストリートアカデミー(東京・文京)の藤本崇社長は熱く語る。

最近では「会社帰りにきれいになろう」というテーマで、丸井グループの商業施設「渋谷モディ」(東京・渋谷)とコラボを始めた。施設内で洋服選びやお化粧の仕方、アクセサリー作りなどを教える。

ショッピングモールで学校? とちょっと違和感を覚えたが、これが大盛況。すぐに全ての講座が埋まった。料金も4000円前後と非常に安価だ。しかも、ファッションコーディネート講座に参加した人の中には、帰り際に5万円もするコートを買って帰った人もいるという。

まさに相乗効果だ。「最近需要が高まってきた『女性の気軽な自分磨きニーズ』」(藤本社長)に応え、それが消費につながった。今、百貨店などの小売業界は、モノからコト消費へと移行する時代である。そんな時代の潮流にあったコラボ企画だ。今回の成功を受けて様々な百貨店から引き合いがあるという。

ストリートアカデミーは別サービスの「オフィスク」で、企業向けの研修も仲介している。大手の研修は、どうしても総花的な「マネジメント研修」や「新卒マナー研修」などになる傾向がある。そこで藤本社長は、ピンポイントでニッチなスキルを社員に身につけさせたいというニーズを狙った。

発注企業が要望する研修をオーダーメードで組み立てられる。例えば大手銀行の秘書向けには「外国人役員をサポートするための英会話レッスン」、コンサルティング会社の社員には「企画を通すためのプレゼン資料作成研修」など、具体的かつ実践的だ。サイトでは講師別の実績を「見える化」し、研修の利用後に口コミも書き込めるようにしていく考えだ。

このオフィスクとは別に、福利厚生としてストアカの講座を社員のスキルアップ目的で導入する企業も増加中という。「個人にとっての学びの選択肢を広く提供し、一歩を踏み出して能動的に生きられる人を増やしたい」と藤本社長。

様々なものから選択できるのはぜいたくだ。それは仕事も一緒。自分の持っている能力の幅を広げたり、それを講師として活用したり。これからは仕事の仕方、学び方も選択する時代である。

あなたの能力もシェアリングエコノミーを通じて世の中に役立てる事ができるかもしれない。そして、誰もがいくつもの顔を持つ時代が来るかもしれない。

[日経MJ2017年2月27日付]

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