2018年9月24日(月)

温暖化防げない事態も想定を オランダは新機関
日本総合研究所理事 足達英一郎

2017/2/27 6:30
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 米トランプ政権が発足し、地球温暖化に懐疑的だといわれるスコット・プルイット氏が環境保護局(EPA)長官に就任した。エネルギー省長官には同様に懐疑論者として知られるリック・ペリー氏の就任も有力視されている。米国の地球温暖化政策が後退するとの見通しから、深刻な気象災害や気象条件の長期的変化など、さまざまな物理的影響や社会経済的影響に「適応」する対策の必要性が改めて注目されている。

  昨年、国連環境計画(UNEP)が発表した報告書は、地球温暖化への適応コストが発展途上国に限っただけでも2050年までに年間2800億~5000億ドルに達し、その資金手当てのめどが全く立っていないことを明らかした。

 先進国ですら十分な対策が取られていない。2月12日、米カリフォルニア州北部にあるオーロビル・ダムの放水路が浸食によって損傷。決壊の危険が高まって、下流の住民約18万8000人に避難命令が出されたが、これも記録的大雨が理由だといわれている。

 1月18日、米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気局(NOAA)は「2016年の地表温度が1880年の観測開始以来の史上最高記録を更新した」と発表した。これまで15年が過去最高だったが、16年はそれを更新したという。

 2月1日には、日本の気象庁も「16年の世界の年平均気温偏差(1981~2010年の30年平均値を基準値とし、平均気温から基準値を差し引いた値)は、セ氏プラス0.45度で、統計を開始した1891年以降では最も高い値となり、3年連続で最高値を更新した」と、同様の分析結果を発表している。

 2月6日、オランダの社会基盤・環境省は、適応に取り組む国や機関、企業を支援する「気候適応グローバルセンター・オブ・エクセレンス」をオランダで立ち上げると発表した。設立の背景には、地球温暖化に対する不十分な対応が、自然災害や社会経済の混乱、政治的緊張といったリスクを増大させているとの考えがある。新機関の設立には、日本の国立環境研究所も参画している。

 翻って、日本国内の適応対策はどの程度進んでいるのだろうか。

 気象庁の先の発表では「16年の日本の年平均気温偏差もプラス0.88度で、統計を開始した1898年以降では最も高い値となった」と明らかにしており、その偏差は世界全体より大きくなっているのである。

 日本国内では、15年11月27日に、気候変動による様々な影響に対し、政府全体として整合のとれた取り組みを総合的かつ計画的に推進するため、「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定された。このなかで「地方公共団体における気候変動の影響評価の実施や適応計画の策定及び実施を促進する必要がある」とされた。しかし、いまだ、すべての都道府県や政令指定都市レベルで、適応計画が策定できている状況ではない。

 産業界でも、業界や企業ごとに認識はまちまちのようだ。建設業における建設現場の熱中症対策、酪農業における夏場の乳牛の酷暑対策、製造業における塗装工程の空調対策など、徐々に知られてきた領域もある。ただ、事業活動ごとの売り上げ低下やコスト増大、資産毀損などの事例は必ずしも共有されていない。

 一方、適応策の優良事例を求める声も大きい。環境省は、昨年8月にポータルサイト「気候変動適応情報プラットフォーム」を開設したが、こうしたサイトの内容拡充も急務だといえるだろう。

 地球温暖化を防止する努力は決して軽んじられるべきではないが、温暖化が人類にもたらす現実の脅威にも目配りしておくことが強く求められる時代になってきている。

[日経産業新聞2017年2月23日付]

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