2019年4月25日(木)

現実を直視した帰還困難区域の復興を

2017/2/18 2:30
保存
共有
印刷
その他

東京電力・福島第1原子力発電所の事故で立ち入りが制限されている帰還困難区域について、政府は復興の指針となる特別措置法の改正案を国会に提出した。区域内に復興の拠点を設け、5年後をめどに避難の解除をめざす。除染にかかる費用は東電に代わって国が負担することも盛った。

帰還困難区域の復興に向けてはまずこの地域の現実を直視する必要がある。帰還を望む住民が減っているなか、復興拠点を地域の再生にどうつなげるのか、政府はその道筋を示すべきだ。除染への国費投入についても、その理由を丁寧に説明することが欠かせない。

2011年の福島原発の事故後、双葉町や浪江町など7市町村が帰還困難区域に指定され、この地域だけでいまも2万人以上が避難を続けている。政府の方針では、市町村が特定の地区を選んで復興拠点とし、国が認定して除染やインフラ再建に取り組むとした。

事故から6年近くたち、帰還困難区域の中でも放射線量がかなり下がってきた場所がある。一律に帰還困難とするのでなく、拠点を設けて復興の足がかりとする考え方自体は妥当だろう。

重要なのは、どこを拠点に選び、どんな将来像を描くか、住民の声をきめ細かくくみとり、計画に反映させることだ。

県外を含めて他の地域に避難している住民の中には、移転先で生活再建をめざしている人も多い。復興庁などが避難者の意向を聞いたところ、帰還を希望する住民は1~2割にとどまり、「戻らない」とした人が半数を超える。

復興拠点がコミュニティーとして機能するには、もともとの居住者が戻るだけでなく、拠点の外から移り住む人を集められるかがカギを握る。商店や医療機関などを呼び戻し、産業や雇用をどのように再生するかも大きな課題だ。

除染への国費投入についても政府が説明を尽くすべきだ。復興庁などは「公共事業として除染とインフラ整備を一体的に進める」と説明している。だが福島原発の廃炉や賠償で東電が負担する費用が予想以上に膨らんだ末の、事実上の東電救済である面は否めない。

東電の負担だけでは福島の除染や復興が進まない現実を包み隠さず説明し、国民の理解を得るべきだ。市町村が立てた計画を国が認定する際にも、国民から幅広く意見を募るなど、透明性の高い手続きが欠かせない。

春割実施中!無料期間中の解約OK!
日経電子版が5月末まで無料!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報