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新規事業に悩んだら「らしくない」のを選ぼう
野口 功一(PwCコンサルティング パートナー)

2017/2/10 6:30
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 依頼が増えているコンサルティング案件に「テクノロジーを使った新規事業創造」がある。人工知能(AI)や分散型台帳技術のブロックチェーン、小型無人機のドローンなどを活用した新しいサービスや製品を作り、事業として立ち上げたいというものだ。ただ、よい事業アイデアが生まれてしばらくは盛り上がっても、時間が経つと忘れ去られたり、事業化プロセスに進んでも様々な障害に阻まれたりして、事業を生み出せないことがままある。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

 そうした会社には「新規事業創造部門」や「イノベーション推進部門」といった名称の正式な組織がある。シリコンバレー流にプロトタイピング(試作品を出して徐々に改良を重ねていく手法)やリーンスタートアップ(必要最小限の投資で事業を始めて顧客の反応をうかがうやり方)の仕組みを持っている。それにもかかわらず、スムーズに進められないのはなぜか。

 シリコンバレーで起業して大企業となったベンチャー企業も、業務の何%かをアイデア創造にあてたりコンテストをしたりするなど、イノベーションを起こし続ける仕組みを導入している。シリコンバレーの大企業が新規事業を生みだし、日本の大企業ができない違いは何か。

 日本企業特有の問題は、本業の枠組みの中で新しい事業を創造するのが非常に難しいということである。新しいことを考えると必ず「それは自社に売り上げや利益をもたらすのか」という議論に直結してしまう。そうならないように中長期的な視点で見ている会社もあるが、それでも予算の仕組みや人事評価が本業の仕組みと同じであれば、あまり意味を持たない。

 事業の評価は、当初は新規立ち上げ実績やプロトタイピングなどで評価し、軌道に乗りそうであれば売り上げや利益で評価する仕組みにする。つまり、複数の新規事業を中長期的にポートフォリオ管理できる物差しや仕組みを用意する必要がある。

 人事評価も結果だけでみるのではなく、新たに構築した新規事業プロセスの中でどのようなアウトプット(成果物)を出したのかもみるべきだ。本業で優秀であった人が必ずしも事業を創造できるとは限らないからだ。

 本業の部署は失敗を許さないような文化であることが多い。新規事業を担当する部署では、むしろ早めに失敗をして学習をする文化にして、評価の仕組みもそれにあわせなければらない。事業アイデアについても、本業とはかけ離れた革新的な内容にする。イノベーションを起こす仕組みというのは、このようなものだ。

 ただ、これは企業としては我慢のいるところであるし、勇気もいるところである。私も自分の会社の中で新規事業創造の役割を担っているが、正直に申し上げると、どうしても従来の枠組みの中で考えてしまうこともある。

 そのときにいつも考えるフレーズは「うちの会社らしくないことであればOK」ということだ。極端かもしれないが、これくらいの考え方でいかないとイノベーションは生まれないと思っている。人間というのは、過去の経験や知識から離れるのは本当に難しい。それを打破するには、思い切って物の考え方を正反対にしてみるくらいでちょうどよいのである。

 最近では日本の大企業でも新規事業創造の仕組みがうまく機能している会社もいくつか出てきている。私も自分のお客様に負けないような新規事業を創造するために「らしくないこと」をどんどん考えていきたい。

[日経産業新聞2017年2月7日付]


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