日本のビールも世界で勝負を
酒税法が改正され、ビール系飲料にかかる酒税が段階的に統一される見通しになった。ビールは減税、発泡酒などは増税となる。国内の税制に合わせ低価格品の開発に注力してきたビール各社はこれを機に、世界市場をみすえ質の高いビールに力を入れてほしい。
ビールの税率は長く高止まりしていたため、各社は味はビール風だが税率の低い商品を開発してきた。海外ではほとんど売れず、価格競争による国内シェア争いは経営の体力を奪った。ビール系飲料全体の市場規模も1994年のピーク時より3割減っている。
いびつだった税制が変わるのを機に、新ブランドを立ち上げては廃止するやり方を改め、長く愛され、国際競争力につながる商品開発やマーケティングに目を向けたい。国内でしっかり収益源に育てられれば海外展開の道も開ける。
世界のビール業界では近年、買収によりトップ企業グループへのシェア集中が進んでいる。日本メーカーが規模の競争でこれから太刀打ちするのは簡単ではない。
ただし韓国、台湾などのアジア向けを中心に、日本のビール輸出は毎年2割以上のペースで伸びている。訪日観光でファンになった人などが日常的に購入するようになってきたという。
米国では業界再編による味の画一化の影響もあり、クラフトビールと呼ばれる個性派ビールのシェアが10%を超えた。米欧でも日本のビールの勝機は十分ある。各社が近年、相次ぎ買収した海外の酒メーカーの持つ生産設備や販路も、うまく活用したい。
ビール減税は大手以外の企業にも追い風になる。日本でのクラフトビールの市場シェアはまだ1%程度だが、減税になれば値下げできる。複雑だった税制が簡素化されれば海外メーカーの目がこれまで以上に日本市場に向く。国内市場の競争環境も変わるわけだ。
規模は大きいが内向きだったビール業界が、いかに国際プレーヤーに脱皮するか。他の内需型産業に手本を示してほしい。
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