2019年9月15日(日)

任天堂スイッチでリアルな「乳搾り」触感
山田 剛良(日経テクノロジーオンライン副編集長)

2017/2/9 6:30
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スマートフォン(スマホ)に表示された通販の洋服。ちょっと画像を拡大して布地の肌触りを触って確かめてみた――。こんな未来がすぐそこにやってきている。これを実現する技術「触覚フィードバック」が一般に広まるからだ。

ニンテンドースイッチのコントローラーは「牛の乳搾り」まで触感で再現できる

ニンテンドースイッチのコントローラーは「牛の乳搾り」まで触感で再現できる

きっかけとなるのは、3月に発売される任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」。コントローラーに「HD振動」と名付けた触覚フィードバック技術を標準搭載する。

「うわ、ほんとにミルクが流れてるみたいだ!」。同僚の記者が思わず声を上げる。1月13日、任天堂はスイッチ向け試作ゲームの試遊会を開いた。同僚が試したのはミニゲーム集「ワンツースイッチ」に含まれる「ミルク」という乳搾りゲームだ。

スイッチのコントローラー「ジョイコン」を牛の乳首に見立てて乳搾りをする。ジョイコン側面のボタンをリズミカルに押すと、内部に液体が流れる感触がする。

触覚フィードバックは人間の感覚をだまして、手のひらや指先に「本物そっくり」の感触を与える技術だ。「うまく使うと、表面のざらつき具合や柔らかさなどの感触、そこにない物体の存在感や重みなどまで感じさせられる」と、同技術の第一人者である慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科の南沢孝太准教授は解説する。

人間の触覚は凹凸感や衝撃、圧力、温度などで構成されるが、温度以外は振動である程度まで再現できる。ジョイコンは触覚フィードバックのために、振動波形を正確に再現できる高度な振動ユニットを組み込んでいるとみられる。

ブルブルと震えるだけの従来のバイブレーターとはレベルが異なる技術で、ゲーム機が標準搭載するのは初めて。任天堂は「ゲームをさらにリアルに楽しんでもらえる」(同社企画制作本部副本部長でスイッチの総合プロデューサーである小泉歓晃氏)と胸を張る。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

ゲーム開発者の反応もおおむね好評だ。スイッチ向けゲームの開発を手掛けるオーバーフェンス(東京・港)の香月薫児会長は「画期的な機能。ゲームならこれに加えて映像と音も同時に演出に使える。うまく作り込めばユーザーの感覚を完全にだますゲームが作れる」と興奮を隠さない。

この技術を10年以上研究してきた南沢准教授は、「スイッチの登場で振動を使いこなす『コンテンツ』が生まれる」と期待する。

振動フィードバック自体は以前から知られていた技術で、現実の触感の再現までは既にできている。しかし、そこからもう一歩進んで振動波形をどう作り込めば、人がどう感じるかというノウハウの蓄積がこれまでは圧倒的に足りなかった。

ゲームへの応用が本格的に始まれば、触覚フィードバックの使いどころや振動波形の作り込みに関する知見が急速にたまり、他の用途への応用が開けてくる。「映像や音響の専門家がいるように、将来は触覚の専門エンジニアが生まれる」と南沢准教授は予想する。

実は米アップルが昨年9月に発売したスマホ「iPhone7」も高度な振動機能を組み込んでいる。今のところ、実際には存在しない「ボタン」をクリックしたかのような感触を与えるためだけに使っているが、南沢准教授は「ゲームのリアル感を高める程度なら今すぐ使える能力がある」という。スマホの操作にも触感が併用されるのは、これから当たり前になりそうだ。

[日経MJ2017年2月6日付]

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