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進化するウーバー、乗客相乗りでさらにシェア

(三浦茜)

最近めっきりバスや電車に乗る機会が減った。ウーバーテクノロジーズの相乗りサービス「ウーバープール」を利用する機会が増えたためだ。

ウーバープールの前に、同社のサービスの全体像を説明したい。東京のウーバーはプロの運転手が運転するハイヤーだが、筆者が住む米サンフランシスコでは、一般人が運転する「ウーバーエックス」が主流だ。

運転免許と車を持ち一定の条件を満たせば、誰でもドライバーになれる。乗客はアプリで現在地と目的地を通知。ドライバーも専用アプリを開き、自分の現在位置をウーバーに知らせる。すると両者を即座にマッチングしてくれるのだ。

ウーバーはドライバーと乗客が互いを評価して質を保つ。「ライドシェア」と呼ばれ、シェアリングエコノミーの有力サービスのひとつである。

さて、本題だ。ライドシェアは当初は「ドライバー1」に対し「乗客1組」だったが、2014年ごろから「ドライバー1」に「乗客複数組」のメニューも始まった。

同じエリアから同じ方向に向かう乗客同士が相乗りする。いうなれば「ライドシェアをさらにシェアする」サービスだ。その代表格がウーバープールで、現在45を超える都市で利用できる。

相乗りなので最大40%ほど安い。サンフランシスコの主要エリアなら大体4.5ドル。バス料金が2.5ドルなので断然プールを選んでしまう。家まで5分ほどで来てくれるし、雨のときなど傘を買うより安い。友達と2人で乗る場合は1ドルほど高くなるだけで済み、1人当たりでは格安になる。

もちろん良いことばかりでもない。同じ方向に行く人と乗り合わせるとはいえ、多少の遠回りの覚悟が必要だ。自分以外に最大2組と乗り合わせる可能性があるので、直接行くのに比べ倍の時間がかかることもある。

逆に乗客が私1人でスムーズに着く場合もある。時間が読めないのでゆとりがあればウーバープールを、急ぐ時はウーバーエックスを使う。

ウーバーは呼ぶときに目的地を入力するため、乗る際に既に料金が決まっている。渋滞などで時間がかかっても加算されない。相乗りがあってもなくても同じだ。

乗客にとっては非常に便利だが、ドライバーにとってはどうなのだろう。ウーバーテクノロジーズは、同じ時間で多くの乗客を乗せて長い距離を走れるため「プールの方が稼げる」とうたっている。はたして実際は?

ドライバーに質問してみると、あまりポジティブではなかった。その理由が興味深かった。もちろん稼げるか否かという点でも多少不満はあるようだが、それ以上にレーティング、つまり乗客からのドライバーの評価に問題があるという。

相乗りで時間もかかるため、ドライバーの質に関わらずレートが低くなる傾向にあるのだそうだ。確かに乗客としては、ドライバーではなく乗車体験を評価してしまう気持ちはよくわかる。この話を聞いて、自分も評価の際に気をつけようと思った。ドライバーは評価が下がりすぎるとこの仕事を続けられないのだ。

ウーバーのトラビス・カラニック最高経営責任者(CEO)は「より多くの人をより少ない車で運び渋滞、公害、駐車場をいかに減らせるか」を考え、ウーバープールを始めたという。

ウーバーは自動運転車の開発にも取り組んでいる。いずれウーバープールも自動運転車に置き換わると思うと非常にワクワクするが、世界中で働く100万人以上のドライバーがどうなるか考えると複雑でもある。

(スクラムベンチャーズ マーケティングVP)

[日経MJ2017年2月3日付]

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