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米温暖化対策が後退 観測データにトランプ氏の影
編集委員 安藤淳

2017/2/6 6:30
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 米国で地球温暖化に懐疑的なトランプ大統領が就任し、オバマ前大統領が進めてきた多くの政策が後退するのは確実だ。米政府が長年、収集・蓄積してきた観測データ、解析結果が利用しづらくなる懸念もある。パリ協定など国際間の取り決めにもじわじわと悪影響を及ぼしそうだ。

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 ホワイトハウスのホームページから「クライメート(気候)」の言葉がほとんど消えた。オバマ政権時代の情報は記録コーナーに残ってはいるがたどり着きにくい。米紙ワシントン・ポストによると、米環境保護局(EPA)は気候変動関連情報をすべて削除するよう指示を受けたという。

 日本のある気候研究者は「1月の一時期、米海洋大気局(NOAA)のデータベースにアクセスできなくなり警告表示が現れた」と話す。NOAAやEPAは米国だけでなく世界のデータが見られる貴重な情報源なだけに、不安が漂う。

 過去の気象データは温暖化を科学的に裏付けるだけでなく、将来の変化を予測するうえでも欠かせない。このため、ペンシルベニア大学の研究者らが「データ・レスキュー(救済)」運動を始めた。国内外の専門家らと協力し、データのダウンロードや画像の写真撮影をして、安全な場所に保存する。

 トランプ大統領は2020年以降の温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱も検討中とされる。オバマ氏は議会の承認を得ずに大統領令でパリ協定に批准した。これを逆手にとりトランプ大統領は大統領令で批准を取り消すか、上院に批准を諮り否決に持ち込む可能性がある。

 ただ、条約事務局には批准国として登録済みなので抹消にはパリ協定で定めた手続きを踏む必要がある。それには発効から最低でも4年かかる。

 米国がパリ協定下で示した温暖化ガス削減目標を無視しても、罰則はない。オバマ政権が末期に、行政権限で駆け込み的に決めた国内対策は比較的容易にやめられる。

 ただ、トランプ政権が撤廃するとしている、石炭火力発電所からの温暖化ガス排出削減を定めた「クリーン電力計画」は法で定められているので簡単には撤廃できない。同計画を巡っては「行き過ぎ」と考える州や機関が政府を相手どって起こした訴訟が進行中だ。被告側の政府の姿勢が180度変わるため、和解や条文解釈を巡る事実上の規制緩和に動く可能性はある。

2016年11月、モロッコで開いたCOP22ではパリ協定のルールづくりを始めたが先行きは不透明だ
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2016年11月、モロッコで開いたCOP22ではパリ協定のルールづくりを始めたが先行きは不透明だ

 米国から気候変動条約事務局への資金拠出は、パレスチナを加盟国とする国連機関への拠出を禁じた既存法に基づき停止する公算が大きい。オバマ政権は、条約事務局は「機関」ではないとしてきたが、トランプ大統領は解釈を変えるだろう。

 途上国の温暖化ガス削減を促すための資金支援も撤回の見通しだ。パリ協定は支援と削減をセットで交渉し絶妙なバランスの上で合意した。日本などが穴埋めを迫られる恐れもある。

 世界の温暖化対策で米国の存在感が低下するのとは対照的に影響力を増すのが中国だ。昨年11月の第22回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP22)で解振華・気候変動事務特別代表は「低炭素・循環型経済に移行する」と宣言した。太陽光・風力発電を増やすほか、今年は全土で排出量取引制度を始める。

 解氏は30年に温暖化ガス排出量のピークを迎える目標を「早められるだろう」と自信をみせた。中国のエネルギー・環境問題に詳しい郭四志帝京大学教授は「中国は環境を国際金融、貿易と並ぶ重要分野と位置づけ主導権を握りたいと考えている」と指摘する。日本の戦略立案にあたり、中国の出方にこれまで以上に注目する必要がある。

[日経産業新聞2017年2月2日付]


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