同盟国は米政権に責任ある行動を促せ
トランプ米大統領の「首脳外交」が動き始めた。就任後、強烈な波紋を広げる政策を相次いで打ち出す新大統領に、世界で不安が強まっている。日本をはじめ同盟国は連携し、米国に責任ある行動を促していく必要がある。
外国首脳として最初にワシントンで会談した英国のメイ首相は、この点でひとまず一定の役割を果たしたといえるだろう。
メイ首相によると、トランプ氏が「時代遅れ」と批判していた北大西洋条約機構(NATO)について、会談では「確固たる関与」を確認した。NATOは米欧同盟の基礎となるだけに、重要性で一致したことは前向きな成果だ。
ロシアとの関係でメイ首相は、米側との共同会見で「ウクライナの和平合意が履行されるまでは対ロ制裁を継続すべきだ」との立場を表明した。ロシアとの関係改善に危ういほど前のめりなトランプ氏に、安易に追随しない姿勢を示したものだ。
英国は第2次大戦後、欧州で最も米国と緊密な同盟国であり続けてきた。欧州連合(EU)から離脱する予定だが、引き続き米欧同盟の中核として、トランプ政権に物申す役回りが期待される。
トランプ氏の就任後の言動からはっきりしてきたのは、自由貿易に反し、排外的な選挙公約を本気で実行しようとしていることだ。
環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決め、メキシコとの国境に壁をつくる大統領令に署名した。シリア難民などの受け入れも中断するという。
このままトランプ氏が独善的な政策を強行していけば米国は世界のリーダーの座を失い、秩序を乱す元凶にすらなりかねない。国際社会への打撃は計り知れない。
米国との結びつきが深いアジアや欧州の同盟国は、民主主義や自由貿易の原則にもとる政策に走らないよう、トランプ政権に働きかけていく必要がある。
アジアでは日本の役割が大きい。米側が要求する日米2国間の貿易や防衛負担をめぐる問題への対応に終始することなく、グローバルな視点から米政権に向き合うことが重要だ。
多国間の自由貿易体制や民主主義の価値の大切さを説き、アジアの安定を保つため日米で協力する路線を再確認する。これまでの米大統領には当たり前だった価値観や世界観をていねいに訴え、共有していく努力が欠かせない。