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キングコング西野の人気絵本 『えんとつ町のプペル』

絵本づくりの常識、全て壊す

NIKKEI STYLE

お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣さんが「にしのあきひろ」名義で出した4作目の絵本「えんとつ町のプペル」(幻冬舎)が異例のヒットを続けている。ネットで資金を募るクラウドファンディングで制作資金を集めたり入場無料の原画展を開いて販売したりと画期的なマーケティング手法も注目される。

物語の舞台は、4千メートルの崖に囲まれ外界との交流のない煙に覆われた「えんとつ町」。住民は青い空や輝く星を知らない。そんな町の外れのゴミ山で生まれた"ゴミ人間"がひょんなことで出会った少年と心を通わせ、星を見せようと空に上っていく――。

これまでの作品と同様、細部まで描き込まれた細密画のような絵の美しさに圧倒されると同時に、初めて挑んだ色彩の美しさにも魅了される。

これを可能にしたのが分業制だ。人物や建物、煙や色塗りなど、クリエーターが得意なところを描き分ける新しい手法で作り上げた。

ただ、出版社側は当初、コストがかさむ分業制に難色を示した。絵本は売り上げが見込みづらく、一人で作るのが一般的だった。そこで西野さんは制作費を調達するためにクラウドファンディングを活用。600万円の目標額に対し、3293人から1013万円を集め、アートディレクターやイラストレーターら総勢35人を雇って指揮した。担当編集者の袖山満一子さんは「赤字を恐れ、保守的な本作りをしてしまいがちな出版社にはないアイデア。アニメ映画監督のように『絵本監督』という絵本づくりの新境地を開き、その斬新さが読者に伝わったのではないか」と話す。

売り方も工夫した。「人は生活必需品でないものにはお金を出さないが、思い出やお土産にはお金を出すもの」。こうした西野さんの考えから原画展を各地で開き、出口で絵本を販売。昨年11月、東京・渋谷で開いた原画展には2万3千人が来場し、約5千部が売れた。開催費用もクラウドファンディングで調達し、180万円の目標額に対し4600万円が集まった。

「絵本はこう作るもの、こうして売るもの」という凝り固まった考えを軽やかに飛び越える西野さんの発想が、ヒットの裏側にはある。

(近)

[日本経済新聞夕刊2017年1月25日付]

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