2019年5月21日(火)

経営者に覚悟はあるか ITで事業再構築の年
校條 浩(米ネットサービス・ベンチャーズ マネージングパートナー)

2017/1/27 6:30
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2017年の幕が開けた。今年のイノベーションの流れを展望したい。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、ベンチャーキャピタル及びファンド・オブ・ファンズを組成。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、ベンチャーキャピタル及びファンド・オブ・ファンズを組成。

製造業はすべてのモノがネットにつながる「IoT」により、ハードウエアとIT(情報技術)をどう融合させるかが本格的な課題となるだろう。日本では、IoTを「ものづくりの復権」と結びつける人が多い。

だが、シリコンバレーでは、ITによってハードウェア領域をけん引するのがIoTだと捉えられている。モノからのデータが取り込まれ、多量のデータの分析・利用により新たな価値を生むという考え方だ。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)は発電機からジェットエンジンまで作る世界有数のものづくり企業だ。そのGEが「2020年までにソフトウエア企業として世界のトップ10に入る」と宣言し、シリコンバレー郊外にソフトウエア開発拠点を新設した。そこには1400人ものソフトウエア人材が働き、IoTのオープンソースアプリケーションが動くためのソフトウエアプラットフォームを開発している。マイクロソフトやシスコシステムズ、アップル、グーグルといった米国を代表するIT企業から転職してきた人たちが中核を担っている。

高度なIT人材を採用できたのは、トップの決意があるからだ。GEの総帥であるジェフ・イメルト氏は「代替プランはない。これをやり遂げるだけだ」と言い切る。

サービス業はどうか。この分野では、金融とITを組み合わせたフィンテックが産業革新をけん引していくだろう。シリコンバレーでは、フィンテックは「バンクからバンキングへ」と表現されている。バンク(銀行、金融業者)のためのITや新サービスの提供だけだった時期は終わり、あらゆるサービス業のためのバンキング(金融機能)の開発へと拡大している。

すでにフィンテックは保険、証券、流通、不動産などの産業に波及している。分散型台帳技術のブロックチェーンを契約関係に利用したり、複雑な規制への対応を自動化したりする仕組みも生まれつつある。フィンテックの特徴は、ITの専門家ではないベテランがITを中心に据えた事業創造に取り組む姿にある。クレジットカード会社や大手銀行の経営幹部だった人がフィンテック分野のベンチャー企業を立ち上げたり、規制官庁の幹部だった人がフィンテック分野のベンチャーキャピタルを組成したりしている。経営トップのリーダーシップのもとにIT分野の人材が集合し、新たな産業のパラダイム(枠組み)が再構築されようとしている。

日本でも産業パラダイムの転換に危機意識を持つ経営者が増えてきたようだ。ITを中心に据えた事業転換は、システム部門のみならず、経営者自身の課題だ。そのきっかけをつかもうとシリコンバレーを訪問する経営幹部が急増している。ITベンダーの情報に頼らず、経営者自身が源流の情報に触れる必要があると感じ始めたようだ。

このような状況の中で、ITベンダーは請負体質から脱却し、顧客への事業提案ができるよう求められている。それには、最先端のイノベーションの動向を深く理解する必要がある。

ただ、最近のシリコンバレーは、数千社のベンチャー企業や数百社ある新興ベンチャー・キャピタルがひしめく新世界を形成し、外からは見えにくくなっている。スペイン王室がコロンブスを送り出したように、経営トップが未知の世界に探検隊を出す覚悟が必要であろう。

[日経産業新聞2017年1月24日付]

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