春秋

2017/1/20 2:30
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「よし、わかった!」。角川映画の「金田一耕助」シリーズには、事件に出くわすと早合点してこう叫ぶ警部がいつも出てきた。大して調べもしないうちに「わかった」だから、その推理は見当違い。名探偵の金田一に軽くいなされ、観客の微苦笑を誘う展開であった。

▼物語の一コマならこういう慌て者がいるのも楽しいが、日本将棋連盟の「わかった」はつくづく罪深い。対局中にコンピューターソフトを不正使用した疑いがあるとして、昨秋、三浦弘行九段をいきなり出場停止処分にした問題のことだ。断罪したものの証拠は出ず、谷川浩司会長が事実上の引責辞任をする仕儀となった。

▼盤に向かえば冷静沈着な人々の集団がこんな悪手を繰り出すとは、何という皮肉な話か。背景には、急速に進化するソフトへの恐怖心があったのかもしれない。いまや将棋も囲碁も人工知能(AI)が人間を脅かす。とはいえあいまいな疑惑情報だけで、すわAIめっ、と色めき立ったのでは戦う前の敗北というほかない。

▼史上最年少のプロ棋士誕生や女性の活躍などで、将棋界への世間の関心は高まっている。こんどの混乱にファンから批判が殺到したのも注目度の高さゆえだ。このさい、連盟も組織のあり方を見直したらどうだろう。「わかった」の早とちりを正してくれる金田一さんみたいな人に、外の世界からお出ましを願ってもいい。

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