2018年6月25日(月)

完全撤退、企業への打撃を抑えよ(英EU離脱)

2017/1/19 2:30
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 英国が欧州連合(EU)離脱に伴い、人やモノ、サービス、資本が自由に移動できるEUの単一市場から完全に撤退すると表明した。英国とEUの経済関係の枠組みが変わり、広範な影響が生じよう。英国のEU離脱がいよいよ後戻りできない局面に入ったという認識のもと、日本政府や企業もさまざまな事態を想定して対応を考えていく必要がある。

移民の流入制限を優先

 英国は昨年6月の国民投票で、移民の流入増加への懸念などを背景にEU離脱を決めた。これを受けてメイ首相はEU域内からの移民の制限や、EU司法裁判所の管轄から抜けて主権を回復することを優先し、単一市場から撤退する方針を明確に示した。

 単一市場は欧州統合の中核だ。英国が人の移動の自由を制限しながら単一市場にとどまる「いいとこ取り」は認めないと他のEU諸国が主張したため、メイ首相は決断に踏み切ったようだ。

 英国には1000を上回る日系企業が進出している。在留邦人は6万人を超え、欧州で最多だ。単一市場離脱は日本企業や関係者に大きな影響を及ぼす恐れがある。

 EUには現在、加盟国のどこかで金融業の免許をとれば域内全域で営業できる「単一パスポート制度」がある。日本の一部金融機関は英国で免許を取得しており、EU離脱に伴い他の加盟国で取り直さなければならない。

 欧州随一の金融センターである英シティの地位が揺らぎかねず、関係企業は、英国に軸足を置いたビジネス展開の見直しも迫られそうだ。

 英国に進出している製造業にとっては、英国とEUの間の関税の取り扱いが最大の関心事だろう。たとえば、日本の自動車メーカーは大陸欧州から部品などを輸入して英国で組み立てて、最終製品を大陸欧州などに輸出している。

 仮に英国とEUの間で関税が復活すれば、それだけ輸出入のコストが膨らみ、ビジネスモデルが成り立たなくなる恐れも出てくる。

 メイ首相は域外に共通の関税をかけるEUの「関税同盟」から抜ける一方で、EUと包括的な自由貿易協定(FTA)を結び、可能な限り単一市場にアクセスできるようにしたい考えを示した。

 英国とEUは、関税を復活して日本企業が欧州でビジネスをしにくくなったり、経済が混乱したりしないように努めてほしい。

 今後の難題のひとつが「移行期間」の扱いだ。英国は3月末までにEUに離脱を正式通告する方針で、その後は原則2年で離脱しなければならない。一方、英国とEUの間の新たなFTAなど離脱後の「将来協定」を結ぶにはそれ以上の時間がかかる見通しだ。

 それまでをつなぐ移行期間がないと、英国にはEU離脱直後から世界貿易機関(WTO)のルールが適用され関税が復活する。移行期間にどの程度の長さをあて、EUのルールをどこまで適用するかなど決めるべき点は多い。

 こうした点に丁寧に対応し、円滑にEUから離脱できるように、英国とEUは建設的な姿勢で交渉に臨むことが求められる。

日本からも働きかけを

 EUから離脱しても、英国が欧州の大国である点は変わらない。経済から外交、安全保障まで英国とEUは重要なパートナーとして、欧州の抱える課題に取り組む必要がある。

 英国ではEU離脱に不満を持つスコットランドで独立への動きが強まる可能性が消えない。メイ政権とEUは、英国が分裂して混乱に陥ることを防ぐとともに、欧州で反EUを唱える勢力が広がらないよう協力して離脱手続きを進めてほしい。

 米国のトランプ次期大統領は英国のEU離脱を支持し、米英間でFTAを結ぶ意欲を示した。EU離脱までは第三国との通商交渉はできないルールがある。内向きな2国間主義に陥りEUに背を向けることにならないよう、両国は留意すべきだ。

 日本政府と企業は起こりうる変化を予想し、的確に備えていかなければならない。同時に、英国とEUが現在と近い経済関係を維持し、開かれた貿易体制を保っていくよう働きかけていくことが重要だ。英国のEU離脱が保護主義への流れにつながることのないよう、日本は先頭にたって自由貿易の旗を振り続ける必要がある。

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