/

遺伝情報に基づくがん治療の普及を急げ

がん患者一人ひとりのゲノム(全遺伝情報)を調べ最適な治療薬を選ぶ方法が、米国や欧州で広がり始めた。日本も今夏に国家プロジェクトを始める予定だが、米欧に大きくおくれているだけに真に効果のある内容にしてほしい。

がん研究はここ10年ほどの間に飛躍的に進んだ。ゲノムを解析する装置が安価で使いやすくなり、普及したのが大きな理由だ。

特に動きが速いのは米国だ。米政府は2015年、個々人の生活習慣や病気の症状と、ゲノムとの関係などを追跡する大型の研究計画を始めた。

16年にはゲノムに基づくがんの診断・治療を実際に行き渡らせる新計画も動きだした。英国も類似のプロジェクトに取り組む。

最新の科学をもとにがんの診断・治療をどう変えていくべきか素早く戦略を立て、プロジェクトを組む姿勢を見習いたい。米国の計画づくりにグーグルやインテル、ゼネラル・エレクトリック(GE)など多彩な企業がかかわっている点も、注目に値する。

日本でもIT(情報技術)産業を巻き込み「医療ビッグデータ」を活用する能力を磨かなくてはならない。ゲノムの特徴と心身の状態を関連づけたデータベースの整備や、新薬の臨床試験の拡充が不可欠だ。先端医療とITの能力を併せ持つ人材の確保も急務だ。

得られた解析結果や症例は、個人情報の保護に配慮しつつ大学や病院、製薬企業などの間でできる限り共有すべきだ。従来のように臓器別に縦割りの研究を続けていては、変革は望めない。

新薬の承認プロセスも見直しが必要になるだろう。ゲノム利用が進み、個人ごとに異なる治療を提供するようになると、大規模な臨床試験はしづらくなるからだ。ゲノム解析をどこまで保険でカバーするかも課題だ。

がん治療薬をめぐっては免疫の働きを高める小野薬品工業の「オプジーボ」の価格が高すぎ、国の医療財政を圧迫すると問題視された。同じような薬はこれからも増えるだろう。ゲノム解析で効果が見込める患者を絞れれば投与を減らせ、経済効果も期待できる。

ゲノムデータは宝の山であり、未知の利用法もまだあるだろう。国立がん研究センターなど中核拠点では米欧に倣うだけでなく、まったく新しい診断・治療法に果敢に取り組めるよう研究費の配分にも工夫が必要だ。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン