2018年12月14日(金)

AIで日本を強く(3)高齢者支援と消費喚起に役立てよ

2017/1/14 2:30
保存
共有
印刷
その他

人工知能(AI)はこれまでのIT(情報技術)に比べ、音声入力や画像認識、臨機応変な対話などの点で素人にも使い勝手がいいのが特徴だ。高齢者や一般の消費者をはじめ、技術に詳しくない人もなじみやすい。

口うるさく目利きでもある日本の消費者は、企業の開発力を鍛え質の高いサービスを生んできた。

孤独感の解消にも

急速に高齢化が進む「課題先進国」として、高齢者の生活支援などで世界に手本を示す意味は大きい。行政や企業のサービスをAIで進化させれば、国内の消費市場の活性化につながる。

65歳以上が人口の4割を占める京都府南山城村で、AIによる高齢者の生活支援の実験が進んでいる。ソフト開発のエルブズ(東京・渋谷)のAI対話システムを使い、タブレット端末から食品を発注したり、バスの運行状況を調べたり、雑談を楽しんだりできるという内容だ。

学習効果によってデータが集まるほど自然で楽しいやりとりが可能になるという。AIは24時間無休なので、買い物支援だけでなく夜間の孤独感の解消にも役立つ。行政や店舗は限られた人数で多くの人に対応できるようになる。

人手不足の中、きめ細かいケアが求められる介護への応用も期待される。コンサルティングのアクセンチュアなどは、要介護者の排尿をセンサーのデータなどから予知し、トイレに連れていくシステムをつくった。NTTデータはロボットメーカーなどとともに、人と対話できるロボットを使った高齢者の見守りを実験している。

コンピューター相手のコミュニケーションというと定型的で無味乾燥なものを想像しがちだ。

しかし2016年版情報通信白書によれば、AIとの会話の経験者に感想を聞くと40.3%が「便利でよいと思った」と答え、「うまく会話できなかった」の24.2%を上回る。「賢くてびっくり」「楽しく会話できた」も2割弱いた。実用段階に入ったといえる。

小売店の店頭や通販では、AIの「お薦め」が新たな消費を生む可能性がある。

ベンチャー企業のカラフル・ボード(東京・渋谷)が開発したソフト「SENSY(センシー)」は、AIが消費者の好みを学び、服や食品を提案する。紳士服のはるやま商事はこのシステムを導入し、それぞれの客が気に入りそうな商品をダイレクトメールで薦め、来店客を15%増やした。

眼鏡専門店「JINS」を展開するジェイアイエヌは昨秋、試着した眼鏡が似合うかどうかをAIが判断するサービスを始めた。3000人の店員が6万人分の眼鏡姿をランク付けしたデータを参考に、AIが助言する。

日本ユニシスは昨年末、飲食店予約サイト、ぐるなびのデータをもとに店を推薦するシステムをつくった。客の年齢や性別は画像から判断し、料理の種類や場所、時間、人数、予算などは対話で聞き出す。結果を総合し、満足しそうな店を提案する。飲食以外の業界でも使えるソフトだという。

ベテラン社員を代行

消費者の間で節約志向が強まっている。特に低成長時代に育った若い世代は後悔を恐れ、買い物での冒険を避ける傾向が強い。AIによる的確な助言をもとに個性的なモノやサービスを選ぶ人が増えれば、企業には商機だ。

販売や接客という場面だけではなく、舞台裏での活用も期待できる。ネット通販の拡大などで流通業や物流業は人手不足に悩む。サービスの維持やきめ細かい対応のためにも、AIを活用したい。

宅配便のヤマトホールディングスは客との応答や効率的な配送ルートづくりにAIを使い始めた。アスクルはAI搭載のピッキングロボットを物流センターに導入、作業効率を向上させている。

ベテラン社員のノウハウもAIが代行し始めた。牛丼の吉野家ホールディングスはAIによる勤務シフトの作成を研究し、多忙な店長をシフト作成の負担から解放するという。NECは販売価格の迅速な変更ができるAIを開発した。自社のシミュレーションでは実在の小売りチェーンの売り上げを11%増やしたという。

人口減と人手不足、社員の高齢化が進むなか、行政や流通の生産性をいかに高めるか。課題の解決にAIが果たす役割は大きい。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報