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春秋

コンビニのおにぎりや弁当が並ぶ棚に、見慣れぬ黒い容器を見かけ手に取った。「七草がゆ」とある。小袋の塩もついていた。店員さんによると「お昼時にはバーッとはけますよ」とのことだ。大きく変わった社会の中でも、古くからの風習はしっかり根を張っている。

▼「正月七日、雪のない所から菜を摘む」と枕草子にある。7種の菜を吸い物にする習わしがあったようだ。おかゆにし始めたのは室町時代から。江戸期には害鳥を追い払う「鳥追い」の行事と結び付き、「鳥が渡ってくる前に」などとはやしながら、まな板をたたいたという。災いを遠ざけ、豊作を祈る意味があったのだ。

▼「かゆには十の利益あり」。福井県の永平寺で修行する僧は、食事の前にこんな経文を唱える。「色つやがよくなる」「気力が増す」など主に体への効用が続くが、かゆが出てくる中国の故事には「栄華のはかなさ」を説くものもある。「邯鄲(かんたん)の夢」だ。貧乏書生が邯鄲の町の茶店で、仙人に身の不幸を嘆く所から始まる。

▼仙人は書生に青磁の枕を授けた。書生は夢の世界で50年間、人生の絶頂とどん底を味わい尽くす。目覚めれば、仙人と会った同じ日で、眠る前に作りかけのかゆは、煮上がってもいなかった、というものだ。いま、トランプ次期米大統領が「わが世の春」とばかりつぶやきを続けている。故事への感想をぜひ聞いてみたい。

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