2019年4月26日(金)

車の生産網寸断招くトランプ流の手法

2017/1/5 2:30
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政治権力者が個別企業の工場立地にまで口をはさんで、産業や経済は混乱しないのだろうか。そんな懸念を覚えざるをえない。

米フォード・モーターはメキシコでの工場新設計画を取りやめ、代わりに米ミシガン州の工場を増強すると発表した。「米国第一」を掲げるトランプ次期大統領が同社のメキシコ生産を強く批判してきた経緯があり、その意に沿う決定となった。

トランプ氏は米ゼネラル・モーターズ(GM)に対しても、メキシコから米国への逆輸入車に「高関税をかけてやる!」とツイッターでつぶやき、生産体制を見直すよう迫っている。

企業経営への介入はこれが初めてではないが、今回の事態が深刻なのは、製造業の中核的存在である自動車産業を標的としていることだ。

とりわけメキシコについては日本勢も日産自動車ホンダマツダが現地生産を始めており、トヨタ自動車も2019年に生産開始の予定だ。日本車だけでなく、独BMWや韓国・起亜自動車も現地生産を進めており、対米輸出の道が閉ざされれば、世界の自動車産業が打撃を受けるだろう。

自動車など組み立て型製造業の生産ネットワークは素材や部品が国境をまたいで自由に往来できることを前提に形成されている。そこに後付けで人為的な壁を設けることは、生産や物流の網の目を寸断する事態を招きかねず、予期せぬ混乱が起こらないか心配だ。

例えばメキシコには近年、自動車部品産業も集積し、年間500億ドル規模の部品を米国に輸出している。仮にこうした部品類にも高関税を課すことになれば、メキシコ製部品を使う米国の工場も稼働に支障をきたすかもしれない。

トランプ次期大統領のふるまいで気になるのは、自由貿易に否定的な保護主義的性向だけではない。個別企業の経営に気ままに介入し、アメとムチで言うことを聞かせる政治スタイルは、経営者に「何をしていいか、何をしてはいけないか」の予見可能性を低め、様子見を強いることになる。

企業が投資などを決める際に、大統領個人の了解を要するような国になれば、自由で起業家精神に満ちた米国経済の強みは失われるだろう。それはトランプ氏の掲げた「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(米国を再び偉大に)」のスローガンにも逆行する。

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