2017年12月16日(土)

株価に映った不確実性への備えを

2016/12/31 2:30
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 株価は経済の先行きを映す鏡だ。2016年の株式市場は景気回復の期待と政治混迷への不安との間で揺れた。政府も企業も環境の急変への備えは十分か、いま一度点検しつつ新年を迎えたい。

 大納会の30日、日経平均株価の終値は1万9114円37銭と15年末に比べ80円66銭高い水準だった。暦年での日経平均の上昇は12年から5年連続で、バブル崩壊後では最長となった。

投資資金が米国に流入

 米株式市場ではダウ工業株30種平均が終盤にかけて上昇の勢いを増し、一時は初の2万ドル台に近づいた。欧州の株価もおおむね堅調に推移した。

 主要国の株価上昇が鮮明になったのは、11月の米大統領選でトランプ氏が勝利してからだ。

 日本の株価に大きな影響を与えた米ダウ平均の年間上昇幅のおよそ6割は、米大統領選以降のものだ。選挙結果は驚きをもって迎えられたが、市場の反応もまた予想外だった。

 トランプ氏の掲げるインフラ投資や規制緩和策が注目され、投資資金が米国に流れた。米景気の回復や財政赤字の拡大を織り込む形で米長期金利が上昇し、外為市場では主要な通貨に対してドルが買われた。米株高と円安・ドル高が日本株の上昇を促した。

 こうした「トランプ相場」が始まる前は、中国や欧州発の要因で日本の株式市場は下落する場面が多かった。

 年の初めには人民元安がきっかけとなり、中国の株式相場が急落した。これにより世界的に投資リスクを避ける動きが強まり、安全資産とされる円が買われ、日本株は下げ足を速めた。

 6月に英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決め、日経平均が1000円を超える大幅な下げとなったのは記憶に新しい。

 こうした中、日銀はマイナス金利の導入や上場投資信託(ETF)購入の拡大、長期金利の操作といった手立てを講じて景気や株価の下支えに動いた。

 企業もまた、昨年来の企業統治改革などを加速させた。ソフトバンクグループによる英アーム・ホールディングスの巨額買収が示したように、成長戦略としてM&A(合併・買収)を活用する動きも定着した観がある。

 企業のこうした取り組みがあったところへ「トランプ相場」の追い風が吹き、日本の株価も底堅く推移したと見るべきだ。

 17年の世界を展望すると、各国で重要な政治日程が続き、金融市場は波乱含みの展開を予想する声が多い。

 米国では1月20日にトランプ大統領が就任する。期待先行の時は過ぎ、現実的な政策遂行の能力が問われる。次期大統領が保護主義的な政策を実施するようなことになれば外為市場はドル安・円高に転じ、日本の株式市場が悪影響を受ける可能性がある。

 欧州に目を転じれば、英国のEU離脱交渉が始まる。フランスの大統領選やドイツの総選挙なども控えている。政治の季節が続く欧州で反EUを掲げる大衆迎合主義(ポピュリズム)の政治勢力が勢いを増すようなら、ユーロの信認が揺らぎかねない。

 日本の政府や企業は、国際政治と絡み合ったグローバルな金融市場の急変への備えを、怠るわけにはいかない。

改革の手綱を緩めるな

 日本は主要国の中で政権の安定度が相対的に高い。安倍晋三首相は高支持率を生かし構造改革を進めるべきだ。アベノミクスは「第1の矢」の金融緩和によりデフレ心理を払拭しつつあるが、社会保障制度や労働市場の改革など踏み込み不足の分野は多い。

 アベノミクスへの外国人投資家の期待はかなり下がっている。今年の株式市場で外国人が売り手に回る場面が多かったことが、それを物語る。安倍首相は経済を成長軌道に乗せる姿勢を、いま一度内外に示す必要がある。

 企業もなすべきことは多い。積年の課題である資本効率の低さを解消しなければならない。経営資源を高採算の事業に集中させるべきだ。100兆円の手元資金を活用すれば投資や賃上げ、株主還元も上積みできる。企業に滞留するお金の巡りが良くなれば、経済の活性化につながっていく。

 日銀の黒田東彦総裁は、日本経済新聞のインタビューで世界経済について「良い方向に向かっている」との認識を示した。しかし、市場に映る未来には不確実性も多く残る。政府も企業も過度の楽観を戒め、改革の歩みを進めていきたい。

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