鳥インフルに最大限の警戒を
致死率の高い高病原性鳥インフルエンザが前例のない勢いで広がっている。野鳥に加え、飼育された鶏などの感染も増えてきた。季節的に流行のピークはこれからで、最大限の警戒が必要だ。
鳥インフルのウイルスは渡り鳥が大陸から運んでくる。人間への感染はまれだが、家禽(かきん)に広がりやすく、その際の経済的な損失は大きい。今シーズン、韓国では既に2500万羽を超える鶏やアヒルを殺処分した。
日本では野鳥の感染件数が過去最高を超えた。鳥の種類によっては症状があらわれにくく、確認されているよりも広範囲に感染が拡大しているおそれもある。それを前提に対策を講じたい。
鶏舎を清潔に保つ。近くで感染報告がなくても、野鳥やネズミなどの小動物が入らないよう、ネットを張ったり隙間をふさいだりする。感染した場合にそなえ、殺処分や消毒の手順を確認し、防護服やマスクをそろえておく。
家禽の死亡数が普段より増えていないか、など、感染を疑わせるわずかな変化も見逃さないよう関係省庁、自治体、農家が協力して監視を強めなくてはならない。
流行は今年だけで済まない可能性が高い。20年ほど前に中国の家禽で最初に見つかって以来、ウイルスは少しずつ性質を変えながら感染範囲を広げてきた。
近年では2010~11年に韓国や日本で、14~15年に北米などで流行した。今シーズンは欧州でも感染報告が相次いでいる。流行が起きやすい状態が数年間は続く、との見方も出ている。
韓国や中国では日本ほど厳密に感染の監視や素早い殺処分が実施されていない、との指摘がある。中国ではワクチンを多用しているが、症状を抑えるだけで感染は防げないため、かえってウイルスを広げている心配もある。
日本政府は国際協力を一段と緊密にし、早めの対策に役立てなくてはならない。ウイルスの遺伝子解析などを進め、感染を防げるワクチンを開発するのも課題だ。