2019年5月21日(火)

出生数100万人割れが示す危機に向き合え

2016/12/25 2:30
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日本で1年間に生まれる赤ちゃんの数が、ついに100万人を割る。2016年は98万1千人にとどまるとの推計を、厚生労働省がまとめた。

第1次ベビーブーム世代は260万人、第2次ベビーブーム世代は200万人を超えていた。その半分以下の数字だ。

長年にわたる少子化で、母親となる年代の女性の数そのものが減っている。大台を割るのは時間の問題だった。ここにいたるまで実効性のある手を打てなかった政府の責任は重い。

子育てにお金がかかる、仕事との両立が難しい、そもそも結婚できるだけの生活基盤が整わない……。少子化の原因は繰り返し指摘され、対策も検討されてきた。

だがどんなに政策を磨き上げたとしても限界がある。エンジンがなければ船は動かないし、優れたかじ取り役も欠かせない。少子化対策は日本の最大の課題である、働き方改革とともにしっかり財源を投入することが大切だ。こうした社会的な合意は、どこまでできていただろうか。

フランスやスウェーデンは手厚い支援により、高い出生率と女性の就労とを両立させてきた。家族関係社会支出が国内総生産(GDP)に占める割合は3%前後ある。これに対し日本は1.25%だ。

子どもたちは将来の社会保障の担い手であり、日本を支える労働力でもある。未来への投資として財源を振り向ける合理性はある。

そのためには、社会保障を効率化しつつ、豊かな高齢者には一定の負担をしてもらうといった改革が必要だ。税と社会保障制度のあり方を一体で見直す抜本改革に踏み込めなかったことが、今の状況を招いていることを、政府は重く受け止めなければならない。

痛みをともなう改革には強いリーダーシップがいる。また、少子化対策は厚生労働省や内閣府など複数の省庁にまたがる。政策に優先順位をつける意味でも、リーダーシップは大切だ。

政府は希望出生率1.8の実現を、経済対策の柱に掲げた。人口1億人の維持もうたう。安倍晋三首相は強い覚悟を持って少子化対策の意義を語り、着実な道筋をつけなければならない。

結婚や出産をするかどうかは、もちろん個人の選択だ。だが望んでも果たせなかったり、先延ばししたりしなければならない障壁が日本の社会には多すぎる。

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