春秋

2016/12/24 2:30
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1600年設立のイギリス東インド会社は、はじめは1回の航海のたびにもうけを分け合っていた。まず船を借りたり乗組員の報酬を払ったりするための資金を集める。船がアジアから物産を持ち帰ると、それを売って得たお金をすべて、出資の比率に応じて分配した。

▼会社があげた利益は元手を出した人のもの、という考え方が明確にあったわけだ。そのころはまだ株式を流通させて広く資金を集めるという仕組みがなく、現在のような株式会社の制度は整っていなかった(羽田正「東インド会社とアジアの海」)。ただ株主の権利が早くから意識されていたことは、注目していいだろう。

▼企業は稼いだお金をため込まず、賃上げに振り向けるべきだ、との声がまた政府から出ている。けれどもそのお金は国が使い道を決められるものではなく、本来、株主のものだ。長い歴史のあるルールである。政府は企業統治改革で株主重視経営を広げようとしているが、株主の権利を損なうことになれば矛盾ではないか。

▼「利益を賃金に回せ」と大ざっぱに言うから角が立つ。言い方に工夫がほしい。たとえば経営者が株主に負っている責任を突く手がある。「利益を人への投資に割いて会社の成長につなげ、株主にもっと報いてみては」という具合にだ。経営者も真面目に受け止めねばなるまい。会社は誰のものか。400年来のテーマだ。

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